児童書に学ぶ、大人が忘れてはいけないこと〜『飛ぶ教室』

2024.09.09

組織・人材

児童書に学ぶ、大人が忘れてはいけないこと〜『飛ぶ教室』

永嶋 泰子

子どもたちの未来を守るために、自分自身の心に正直であり続けることが求められます。エーリヒ・ケストナーが命を懸けて書いた児童書『飛ぶ教室』に込められたメッセージから、どんな時代にも諦めず、正直さを貫く生き方の本質をお届けいたします。

どんなに辛くても正直であるべきだ、と思うのだ。

『飛ぶ教室』エーリヒ・ケストナー


生き方を導く、児童書

「児童書は、子ども向けに書かれたものだからこそ、生き方をダイレクトに伝えてくれるものなのです。」

ゲド戦記の訳者・清水真砂子氏から大学生時代に教えられた言葉でした。

20年以上経ちますが、この言葉の意味はいまも色褪せていません。それどころか、児童書を手に取った時に清水氏の言葉が鮮やかに思い浮かぶのです。

大人になったからこそ、より深く感じることがある。

そう思うのです。

エーリヒ・ケストナーの『飛ぶ教室』もそんな一冊でした。

というのも、ケストナーは子どもが夢を持つことが難しかった時代に、子どもたちのために命懸けで作品を残した人だったのです。

命懸けで書かれた『飛ぶ教室』

児童書作家と聞いて皆さんはどんな人を想像するでしょうか?

さぞかし穏やかで優しい人だと思われるかもしれません。

私も同じように思っていました。しかし、訳者の池田香代子氏によるとドイツ人のケストナーの生きた時代は、ナチスが台頭し、徐々に自由が奪われていく時代に突入していました。

『飛ぶ教室』が書き上げられる1ヶ月前には、反ナチスとみなされた本はナチスによって焚書が行われました。ケストナーの本も例外ではありませんでした。彼は、目の前で自分の本が燃やされるのを群衆に紛れて見たのだといいます。

ナチスに挑んだ作家の勇気

さらにケストナーが大胆なのは、そのエピソードを『飛ぶ教室』に取り入れたことでした。作中には、生徒のノートが目の前で燃やされる描写があります。作家にとって、作品を燃やされるというのはどんなに悲しい出来事だったでしょうか。いや、それよりも自由が奪われ、「統制」の時代へ向かう恐怖を感じていたのかもしれません。

しかし、ケストナーは決してひるみませんでした。「どんなに辛くても正直であるべきだ、と思うのだ。」と『飛ぶ教室』に書いているように彼は自分に正直であることを、ペンを通して貫いたのでした。

彼は『飛ぶ教室』の中でこうも言っています。

「どうしておとなは自分の子どものころをすっかり忘れてしまい、子どもたちには悲しいことやみじめなことだってあることをある日とつぜん、まったく理解できなくなってしまうのだろう。」

子どもたちが感じることを理解する

子どもだって大人と同じようにたくさん感じて、考えています。

ただそれを言葉にして表現することが、できないこともあります。

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永嶋 泰子

「感動の先にビジョンがある」を理念として、ビジョンを持って目標を実現する「3ヶ月メソッド」を考案。 33歳で第一子を亡くし逆境から立ち直った経験をもとに、アメブロ、インスタグラム、Facebook等で継続的に発信を行なっている。 人の強みをみつけることを強みとし、イベントやコンテンツ制作のプロデュースなどを得意とする。 ▼アメブロ https://ameblo.jp/moharinayasuko ▼インスタグラム https://www.instagram.com/hanayasuko_1030/ ▼Facebook https://www.facebook.com/nagashima.yasuko

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