「サービス」をサイエンスと捉え、現在企業が捉えている「サービス」の概念を根本的に変革していこうとされている松井さん。改めてサービスの本質、クレームへの得点型対処、エンゲージメントの再定義など、幅広いお話しをうかがいました。 (聞き手:猪口真)
もう一つは、事前期待はニーズ等の潜在的なものも含みます。地表に転がっている芋だけを拾うような、現状の可視化された事前期待だけに応えていては、当たり前のサービスにとどまってしまいます。そこでもっと事前期待を知ろうと、お客様に対して「何を期待していますか」と単純に聞いても、「う~ん、もっと安くしてほしいかな」とか「お願いした事をちゃんとやってくれればそれで良いです」という具合に、薄っぺらい回答しか返ってきません。顧客自身が自分のニーズや期待が分からない時代だと言われているくらいですから。なのでむしろ、「お客様がこのまま進んでいったら、将来的にはこういう期待が出てくるのではないか」という潜在的な期待について、サービス提供者の経験知を活かして議論をして、まずは仮説として的を定めるのです。
クレームは「期待のマネジメント」でチャンスに変えられる
猪口 ありがちな話で、カスタマーサポートセンターや店舗の販売担当員がお客様の言葉をうのみにしてしまうことがあります。「お客様にこう言われたので、こうしてください」と言われて、新しい提案をすると、お客様から「そういう意味で言ったのではない」あるいは「それはもういい」と返されてしまう。そのようなことが発生している現場に対して、マネージャーはどう対処すればいいでしょうか。
松井 私であれば「事前期待の的を設計しましょう」と言います。その時、それがいつの事前期待なのかがとても大事です。お客様が本質的にサービスの価値を実感できるように、成長したり、経験を積んだり、リテラシーが上がった先の事前期待を的にする必要があります。今日の事前期待は明日もあるでしょうか。例えば、今日我々のサービスを利用して良かったと感じたのであれば、次の期待は上がったり、違うものが出てきたりと変化していきます。「松井さんがここまでやってくれるなら、こっちの部署の相談も持って行ってみよう」といったことも起きてくる。期待は必ず変化していくものなのです。「この期待が変化した先にどのような期待があるのか」を見据えて、サービスをマネジメントしていくことが大事です。
猪口 BtoBにおいても、仮にクレームに応えた商品を出して、お客様に提案しても、「それはもう先月で終わっているから」ということもありそうです。
松井 私は価値向上のプロジェクトが多いのですが、最近はクレームから価値をいかに高めるかをテーマにしたプロジェクトも行っています。私は、クレームも価値向上に持っていくためのプロセスの一つとして設計します。目標地点にどのような事前期待があって、それに対してどのような現象が起きたことでクレームになったのか。そもそもお客様がわざわざ自分の時間と労力を使ってクレームを言ってくれるのは、その会社に対してまだ諦めていないということです。そこで逃げずに、クレームから挽回してプラマイゼロに戻すだけでなく、期待に向けたアプローチまで含めてやっていきます。クレームを出したお客様が良いお客様に変わることも多く、今のヘビーリピーターの半分くらいが過去クレーマーだったという会社もあります。そういう意味では、期待の目標地点がはっきりしていれば、クレームはプラスの現象に変えられる、チャンスに変えられるのです。
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