前編に引き続き、金森流「ビジネスセンスを磨く」後編をお届けします。前編では、①「自分のキャリアやスキルの定期的な棚卸しとアップデート」②「バランスのとれたプロデュース力」③「人脈をメンテナンスし紹介を得る」を紹介いただきましたが、後編では、ご専門のマーケティングに関する部分についてお話しを伺いました。
猪口 社会がそうしろと言っているからというように、基本的な自分たちの業務と社会的な視点が少しずれてしまうことがあります。DXやSDGs、賃上げもそうですね。手段的な話が先に来てしまって、今、経営者の方々はとても苦労されていると思います。
金森 失われた何十年の日本の停滞というのは、けっきょく日本はマーケティングが弱いのですよね。日本はものづくりの国なので、ものから入ってしまう。だから、手段と目的が逆転してしまう。
猪口 「欲しがられるものを作れ」というのも、ウォンツから入ってしまっているということですか。
金森 「欲しがられる」というのは、日本が一番成長した高度成長期の頃の考え方です。皆が同じように同じものを欲しがっているから、ものが足りない。それをいかに迅速に生産して、迅速に供給するかという、未だにマスプロダクト、マスマーケティングの思考から抜け出せていないのです。
例えば、ポジショニングマップの軸は絶対に顧客視点で作らなければなりません。ところが、軸の作り方についてマーケティングの本を見ても、どうやって軸を導き出すか書いてある本は少ないです。するとどうなるかというと、競合商品と自社製品のスペックを表に出して、ここが負けている、ここのスペックなら勝てると、自分たちの優位点をマップにしてポジションを作ってしまう。そんなふうにスペックを打ち出したとしても、けっきょくそれが顧客の求めているものでなければ大失敗します。だから軸はKBF(Key Buying Factor:購買決定要因)で、顧客が購買する理由であるべきです。顧客視点で軸を切る、ということです。KBFの元となるのがそもそもニーズですが、そのような視点が欠けていますよね。
ビジネスセンス⑥「正しいインプットを行う」
猪口 ところが商品開発の時にはまず価格と機能で、自分たちが作りやすいとこから入ってしまう。たまに出るデザイン性というのもやはり作る側の視点です。軸をKBFにするようなセンスを鍛えるにはどうしたらいいでしょうか。
金森 市場を細分化する時に、性別や年齢といった属性で入ってしまいがちですが、セグメンテーションはニーズで括らなければなりません。ニーズに注目して一つの固まりを作って、その固まりはどのような人たちで構成されているかという、つまり属性を付与します。これは顧客視点でニーズから考える癖をつけて、視点を切り替えないとできないことです。ポジショニングは顧客視点で、KBFで軸を切る。このように、徹底して顧客視点に立って、マーケティングの王道のフレームワークの使い方を覚えてもらうようにしています。
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