前編に引き続き、金森流「ビジネスセンスを磨く」後編をお届けします。前編では、①「自分のキャリアやスキルの定期的な棚卸しとアップデート」②「バランスのとれたプロデュース力」③「人脈をメンテナンスし紹介を得る」を紹介いただきましたが、後編では、ご専門のマーケティングに関する部分についてお話しを伺いました。
猪口 3年を3回続けたわけですね。
金森 そうです。なぜかというとけっこう面白かった。電通ワンダーマンでは、常に自分が一番新しいことをやろうと決めていました。常に新しいこと、先頭を走らせてもらっていたので飽きなかった。それだけ吸収するものがたくさんあったのです。転石苔むさずで、常に最先端を転がり続けていました。組織の中でも、やりたいと手を挙げて自らやることが大事です。それを実行して、気が付くと10年7カ月が経っていました。
猪口 そのように新しいことにチャレンジし続けるには勇気がいりますね。自分でバリアを作って、「俺はこれだけやる」と言うほうが簡単です。常に違うこと、新しいことをやるためにはセンスも必要です。
金森 形ができあがって運用フェーズに移ったら、すぐ人に渡して、次のことを仕掛け始める。そう心がけていました。この10年7カ月というのは、自分の芸域が広がり、深掘りもできた非常に良い年月だったと思います。
猪口 独立しているとそれがリスクになるし、躊躇してしまいがちです。そういう意味でいうと、金森さんが100人から150人ぐらいの会社をあえて選んできたというのも納得しました。大手だと、それこそ自分が行きたい部署にいけません。
金森 何かあった時には社長に直訴できる会社に勤めようと思っていました。だから、社長に「やらせてください」とよく直訴していましたよ。
ビジネスセンス⑤「顧客ニーズ視点を持ち続ける」
猪口 金森さんと言えば、マーケティングの本質を丁寧に紹介されている書籍がありますが、次の本も準備されていますか。
金森 今、DXについての本を共著で執筆中です。マーケティングの視点が欠けているために、DXがうまくいかないことがあります。そもそもニーズがないところにシステムを導入して、形ばかりのDXをして、全然成果が出ていないケースもたくさんあります。ニーズを明確にして深掘りすることがマーケティングの第一歩ですが、そこからボタンが掛け違っている例も非常に多かったりします。
猪口 少し前に出たDXのレポートに、「最大の課題は、全体的な戦略とビジョンが明確でない」という笑い話のようなことが書かれていました。日本においては、DXがお粗末なものになってしまっているケースも多く見られます。
金森 手段が目的化しています。ニーズとウォンツの関係でいうと、ウォンツから入ってしまうという一番だめなパターンで、手段と目的が逆転していることがほとんどです。まずは現状を認識し、あるべき姿を描く。そのギャップがニーズであり、そのニーズを明確にする。そんなマーケティングの1年生に教えるようなところから見直してみると、間違っていたことに気づきます。
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