仕事現場では多くの人が「自律が大事だ」「キャリア自律しなくてはいけない」とよく口にします。しかし「自律|自律的に働く」がどういう状態であるのか、ましてや「自律」を育むことがどういうことなのかを明解にとらえ、発信しようとしてきませんでした。本稿ではその「自律」をある角度からながめてみます。
会社(経営者や人事担当者、管理職者)も、働く個人も、そして研修事業者やキャリアコンサルタントも、「自律が大事だ」「キャリア自律しなくてはいけない」とよく口にします。しかし「自律|自律的に働く」がどういう状態であるのか、ましてや「自律」を育むことがどういうことなのかを明解にとらえ、発信しようとしてきませんでした。
本稿では自律を「5+3=●、○+○=8」でとらえ考えてみます。私が研修・ワークショップで使っている講義スライドとともにみてまいりましょう。
「閉じた質問」と「開いた質問」
ここに3つの演算式があります。
最初の「5+3=●」は「閉じた質問」と呼ばれるものです。これは誰が答えても「8」。それしか答えようがないので閉じています。
その点、2番目の「○+○=8」は「開いた質問」です。与えられた右辺の「8」に対し、人によって「3、5」と答えたり「2、6」と答えたり。左辺の組み合わせは無限にあります。
3番目の「○+○=○」は、右辺も左辺も無限に考えられるので、これはもう言ってみれば「開ききった質問」です。
「閉じた業務」=答えがある作業を着実にやる
さて、この3つの演算式をふだん職場で行っている仕事に当てはめて考えてみます。
まず、職場では「5+3はいくつ?」「3+4はいくつ?」「2+9はいくつ? きちんと計算して答えを出しなさい」のような業務があります。定型業務と言われる仕事がそのひとつです。求められる答えがあらかじめ決まっていて、任される者はその作業を処理する能力(ここでは足し算という演算技能)をきちんと覚えなくてはなりません。
この種の仕事は誰がやっても同じ答えになりますから、いわば「閉じた業務」と言っていいでしょう。「閉じた業務」において創造性はあまり必要ありません。ともかく正確に、効率よく、根気を持って1つ1つこなしていくのが「よい作業者」です。
そうして「この作業はもうあなたに任せても大丈夫ですね」と言われるようになる。これが仕事をするうえでの「自立」ということです。
「開いた業務」=答えは無限にあり、それを自分でつくり出す
次に、上司から「○+○=8」を考えてほしいと頼まれる仕事があります。
右辺の「8」は与えられた目標ととらえてください。その目標に対し、どうやれば達成できるかを考える仕事です。「8」を成り立たせる左辺の組み合わせはいろいろあるでしょう。それを自分なりに根拠をもって創造するのです。
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2009.02.10
2015.01.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。