埼玉県で発生した訪問診療医師射殺事件。コロナ禍でも在宅医療に取り組む貴重な医療人を、一方的で独善的なクレームを寄せるカスハラ(カスタマーハラスメント)が、殺人にまで至るという究極の終末を迎えてしまいました。
「患者様」という言葉は必要以上に患者の立場を誤解させた恐れがあります。本質は上も下もなく、常識をもって、サービスを提供する・受けるという、当たり前の関係性を理解できない人間は、この殺人犯のように確実に存在します。
また「患者様」と呼んだかどうかと本来のホスピタリティは何の関係もありません。口先だけの敬語には何の意味もなく、また医者は聖人でなければならないものでなく、医療を提供することが業務です。
医療者ゆえに無料奉仕やホテルのようなサービスを提供する義務など絶対にありません。
・お客様はお客さんという視点
犯人は図書から計画的に殺害を謀ろうと、夜9時に医師たちを呼び出したとのこと。また以前からトラブルがあったのであれば、亡くなった患者の自宅を訪問するという行為も本当に必要だったのか、悔やまれます。
当然善意であり誠意からこうした対処を選ばれたのであろうことは、本当に気の毒であり、非難されるものではありません。しかし個人の心情ではなく、もはや日本社会は常に殺人にまで至るリスクと切り離せなくなっているという事実は、全国民が理解すべきでしょう。
喫煙を注意され、電車で重傷を負わせるほどの暴行を働く者
勝手な追い越しを邪魔されたと、怒鳴り込む者
こうした犯罪者は日常生活にいるのです。
この現実を見ないことにはできません。医療は業務であり、業務である以上、業務外の対応はできません。それは誠意の無さではなく、パンデミック下でなかろうとも、医療を崩壊から防ぐため不可欠な認識です。
「断る勇気」は、こうしたカスハラ、モンスターから医療を守るためにもぜひ実現してほしいものだと思います。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。