10/1の内定式といえばもはや伝統季節行事。昭和の人なら、ダイエーの故・中内会長の英語スピーチなども覚えてないでしょうか?各社の内定式はニュースの定番として今年も放映されましたが、実は毎年、その陰で攻防戦があります。内定学生と採用企業の戦いです。それは大学教員を初めて15年、毎年起こっています。
内々定は早ければ年明け早々に出た人もいますが、「内定」は10/1が普通です。
「どっちだって同じだろ?」
と思うでしょうし、実効性からみればほぼ同じというのは間違いではありません。
では何が違うのでしょう。
拘束力が違います。いや、内々定だって、断る時すごい怒られた、文句やイヤミ言われたという人もいるでしょう。「怒る」がどんな行為かにもよりますが、暴力は論外で刑法犯罪。暴言や中傷もハラスメントになります。ただ声のトーンが恐かった、くらいだと犯罪証明は無理です。イヤミ程度ではやはり犯罪としての立証はできないでしょう。
一方企業側は、内々定や内定受諾したにも関わらず、それを一方的に誓約書提出後に反故にされたらたまりません。一方的な契約破棄など許される訳もなく、ふざけるな!という怒りが沸くのも当然です。
その結果、中には「今から辞退なんて許せない。損害賠償請求で訴えてやる!」という企業も出てきます。(15年間毎年、この手の話を学生から聞きます)
ちなみに私は人事コンサルタントの業務として20年近く「人事相談」を行っています。学生ではなく、企業の人事の方からの相談に専門家としてお答えするもので、登録会員企業以外の一般の人は内容を見ることができません。
企業側からも、毎年「勝手に内定辞退された。どうすべきか。」「どう報復できるか/損害賠償請求は?」などの相談が寄せられます。単に法律の条文と照らし合わせるだけで済むならコンサルタントなど要りません。個別にさまざまな事情や背景があり、それらを一つ一つ検証しつつ考えなければならないので、一発で「これ!」という答はないというのが実態です。
学生からの相談においても、企業からの相談においても、一般論をバサーッっと一刀両断に回答するのではなく、そもそもどんな経緯なのか、どのようなやり取りがあったのか、内定受諾とはどんな文面なのか、いつなのか・・・・など、具体的に事実を一つ一つ検証して行かなければなりません。
具体的な対応は一般論ではなく、個別でなければ判断はできないものといえます。
なので企業の方には人事相談を、学生には個人相談をおすすめするのですが、そうやって商売に結びつけやがってと怒られることもあるのですが、これは商売だけが理由ではないのです。←商売は否定していない
個別事情抜きの「内定辞退出来ますか、出来ませんか?」と聞かれても、答えようがないのです。「内定辞退を今ごろ言ってきた学生を懲らしめられませんか」と聞かれるのも同じです。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。