オリンピック、パラリンピック決行の一方、コロナの爆発的蔓延は止まらず、政府への対策責任を問う声や批判は止みません。横浜市長選挙はいつのまにか自民系候補=菅首相というイメージが進み、結局野党系市長当選となりました。
財界に直談判に及んだ首相はじめ、今自らアポなし訪問してしまう営業部長のように、世の中には旧来の価値観、旧来のコミュニケーションでないと満足できない人が一定量いるのです。そうした人たちは、時機を得た感染症対策として声かけの中止やリモートワーク促進することを、頭では理解出来ても、体が感覚的に受け入れられていないのだろうと想像します。
結果として「お客様の声」として、感染症対策がサービス低下というクレームになり、クレーム対応を戦略的に行うことができない経営体制下では、「大きい声」に従ってしまうことになるのです。大きい声は単に目立つだけで、真のお客様の声では絶対にありません。しかし旧来の価値観から抜け出せない経営者が意思決定すると、大きい声こそお客様の声だという間違った判断をしてしまうのです。
・なぜ旧来の価値観が跋扈するのか
感染症対策に本気で取り組むのであれば、大声接客も、リモート会議ではなく直談判や対面も、わざわざノーアポで顧客回りも全部ダメです。科学的にあり得ない選択肢ですが、首相自らが直談判という選択肢を選ぶほどにこうした非科学的な旧来の価値観を持った人が意思決定者であり、それに基づく間違った行動が跋扈しているのです。
全てが後手後手としくじる日本のコロナ対応は、旧来の価値観に拘泥するデシジョンメーカー(意思決定者)が差配しているからです。
それは「相手と直接会わなきゃ真意や誠意が伝わらない」という価値観を捨てることができない人たちです。
個人の信条はどんなものであれ憲法で保証されますが、今は戦時なんです。
平時ではなく、戦時での危機管理が必要な非常事態だということをどこまで認識しているのでしょうか。
何もない平時であれば、個人の価値観は自由です。
日本において戦争体験を持っている人は恐らく私の親世代、70代後半から80代以上の方でしょう。72才の菅首相は昭和23年生まれ。首相含め70代前半までの経営者の方々のほとんどは実際の戦争体験者ではありません。
もちろん終戦後の厳しい社会を生き抜かれたことはさぞたいへんだったとは思います。しかし本当の戦時を経験していない人たちが、現在の日本のデシジョンメーカーであるがゆえ、コロナという戦時対応が必要な非常事態への適応が出来ていないのだと思います。
・リモートワークができない会社を見切るべき理由
「コロナ前」価値観からの脱皮ができない会社だからです。小売業やサービス業など、リモートワークができない業種はあります。しかし普通のオフィスワークであるにも関わらず、「リモートでは仕事にならない」と経営者自らが考えているのであれば、その会社は環境対応が出来ない会社だと見るべきでしょう。リモートワークができるにもかかわらず、本格的な取り組みをしないのならそれは対応できていることになりません。
社長や経営者はリモート促進しようとしても、中間管理職がそれを阻止する例もあります。そうであるならその組織はガバナンスが出来ていないことを示しています。いわば血管が詰まって組織が壊死してしまう状態です。台風時に出社を強要する上司も、コロナ下でも歓送迎会をやってしまう官僚も、同じメンタリティといえます。
つまりコロナへの対応を見れば、環境変化への対応ができる組織なのか、自然に淘汰されてしまう組織なのかどうかが見えてくるのです。
菅首相自らがズーム会議を設定できる必要は一切ありません。
当然秘書官に命じて、こんな時機だから率先垂範して、対面交渉ではなくリモート会議で財界と交渉できる人だったら、こんな現状や横浜市長選のようなことにはなっていなかったと思います。
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2021.11.08
2009.02.10
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。