財務省からの発表によれば、2020年度の税収実績は60.8兆円。過去最高となり、前年比4.1%の増加だったというのだ。コロナ禍で経済が大打撃を受ける中で、税収が伸びることが不思議としか言いようがないのだが、いったい何が起きているのか。
こうなると、国の給付金や雇用調整助成金などの経済支援策などがうまくいったなどという、国の高笑いが聞こえてきそうだが、そんなに単純なことでもなさそうだ。
マクロとしての税収は、けっきょく大企業がいかに儲かるかに焦点を絞るほうがいいということがより明白になったということか。残念ながら、中小(特に小規模)の全体税収のウエートが低すぎるのだろう。
今回のコロナ禍では、飲食業が集中的に押さえつけられた。当初はパチンコ店やら言われたものだが、現在はほぼ飲食に絞られている。
飲食店は、そこら中にある感覚なので、就業人数や売上もそこそこあるようなイメージがあるのだが、実際はどうなのだろう。東京は、世界的に見ても飲食業が多い都市であるのは間違いなさそうだが、東京都の出しているデータで、「経済活動別(産業別)GDP構成費(名目)の比較」というのがある。そのデータを見ると「宿泊・飲食サービス」は、全体の2.2%しかない。しかも飲食関連は小規模事業者(または個人)が多く、黒字幅も大きくない。必然的に総税金額も小さい。これを見る限り、国が力を入れたいと思うのは、製造、卸売・小売、不動産などになるのも理解できる。
だから、税収を国の活性化の大きな指標と考えれば、「宿泊・飲食サービス」については、国はもはや興味がないのかもしれない。
宿泊・飲食サービスだけではなく、もはや需要(経済効果)は、国内ではなく、中国を中心とした、人口増加国なのだろう。
これだけ、飲食やエンターテイメント業界が抑え込まれ、舞台やイベント関連のアーティスト、スタッフも仕事がなく、自殺者も増加しているというのに、企業も国も儲かっている。
もはや「おかしい」というレベルではなくなっている。「経済に最もダメージが少ない産業」ばかりがいじめられる状況が国の政策なのかと思いたくなる。
国の豊かさや一人ひとりの幸福度というのは、大企業ばかりが儲かることでは決してないだろう。もちろん、納税額で企業価値が決まるはずもない。しかも、企業の内部留保の金額は膨大になり、2020年10月時のものだが、企業の内部留保(利益余剰金)8年連続増(前年度比2.6%増の475兆161億円)となっているそうだ。よく、日本人は貯金好きだなどと揶揄する人も多いが、企業の貯金好きはけたはずれだ。
コロナは、国策のかたちすらゆがめてしまったのだろうか。
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