近未来にAIが普及すること自体はほぼ自明だ。しかしその影響にはそもそも誤解が少なくない。実態がよく知られていないがゆえに過大視されがちな側面もあるが、意外と無視されている側面もある。AI利用による新サービス/製品の企画・開発をお手伝いする機会が以前から多い弊社としては、こうした点が妙に気になってしまう。
2.AIへのネガティブな捉え方に付きまとう「嘘」
一方、AIに関してはネガティブなとらえ方をする向きも少なくない。その最も有名なものが「AIによって多くの仕事が奪われる時代が来る」という言説だ。
英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フライ研究員が共に著した『雇用の未来—コンピュータ化によって仕事は失われるのか』という論文が最も有名だろう。その論文によると、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結論なのだ。いっときは週刊誌などで大いに掲載されていたので聞きかじった人も少なくないのではないか。
さらにその論文執筆者2人と共同研究した野村総合研究所が同様の、日本でのAIが仕事にもたらす影響に関するレポートを発表している。
https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf
こちらは、「10~20 年後に、日本の労働人口の約 49%が就いている職業においてAIが代替しかねない」との推計結果を出して、「身近な話なんだ」と世に衝撃を与えたことも記憶に新しい。
でもいずれも、コンピュータが得意な、「データに基づいた単純作業(入力・抽出など)」「正確性が求められるデータの処理」「データの照合」といったものの組み合わせで成り立っている仕事が奪われやすいという結論なのだ。それは当然だろう。
しかしこの2つの論文(および類似の考察)に関しては具体的な職業名を鵜呑みにしないほうがよい。なぜならコンピュータには得意な部分をやらせて、相変わらず人間は雑多な周辺業務を含めて関連する仕事をし続けることになる可能性も随分とあるからだ。例えば「行政事務員(国、地方)」という仕事は、手続き事務的な部分はコンピュータというツールを使って効率的に行われるようになっても、相変わらず住民の相談受付や各部署との調整は人間が行うことに落ち着く可能性が高い。
もう一つ、鵜呑みにしないほうがいい理由がある。AIが代替するには物理的な作業を行うロボットが必要となるケースが幾つも散見されるが(「給食調理人」「建設作業員」「スーパー店員」など)、そうしたロボットを新たに開発し代替させるより人間がやったほうが社会的にコスト安に済むケースが多いと考えられるからだ(もちろん、深刻な人手不足のせいで当該職の「なり手」がいなくなったらAI付きの作業ロボットも開発・導入されようが、それは「AIが仕事を奪う」という話ではない)。
経営・事業戦略
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/