いわゆる「できるビジネスマン」の思考条件としてよく言われることが、問題解決のためには、「問題と感情を分けなさい」ということだ。 一般ビジネスマンにそんなことが本当にできるのだろうか。
次に、相手が感情的になっている場合。これまで経験してきたクレームに対する対応を考えれば、実は自分が気にするのは、相手の気持ちだけだということを思い出す。相手が、こちらの対応になぜか怒り心頭の場合、「いやいやそれは誤解です。いったん、お気持ちは置いといて」と解決できたかというと、私には無理だった。どれだけかっこよくロジカルに叫んでも、「だまれ」の一言でさらにひどいことになった。
スティーブン・R・コヴィーは、著書『第3の案』のなかで、次のように言う。
「どんな対立にも感情が絡んでいる。給与を巡る単純な対立一つをとっても、そこには深い怖れと期待が結びついているものである。仮にあなたが女性の上司で、男性の部下が給与の不満を言いにきたとする。あなたの目の前にいる部下は、相容れない感情をいまにも爆発させるかもしれない。(中略)彼が感情的になったら、問題点だけを考えましょうよと、ありきたりなアドバイスをするだろう。しかしこれでは感情の解決にはならない。言葉とは裏腹に、問題点だけを考えることなどできていないのだ。暫定協定は結べても、そこに絡んでいる感情は交渉できるものではない。くすぶった気持ちはいつか表面化する」
「感情の問題はいったん置いといて」ということではなく、「感情」自体が問題なのだから、結局、感情の問題を先に解決しないことには、ものごとは何も進まないのではないか。
同じような物理的な大変さを持つ仕事があったとしても、お客さんなりパートナーなりが、気持ちよく仕事をしてくれる場合とそうでない場合とでは、雲泥の差がある。
お互い気持ちよく仕事をした場合は、「あれは大変でしたね。どれだけ苦労したか」と、とてもいい思い出話となる。それがきっかけで本当に友人になったりもする。ところが逆の場合は、うまく収まったとしても、いやな気分しか残らないことも多い。「次もお願いします!」という気持ちを持つことはほとんどない。
人生の悩みのほとんどは、人間関係によるものだといわれるように、自分が感情的になろうが、相手がなろうが、それはお互いの人間関係、コミュニケーションの問題ということになる。
感情と問題を切り離し、問題を解決する有能なコンサルタントさんには心から尊敬する。しかも、仕事を継続してできるのだ。
私ら、並みのビジネスマンには到底真似することのできないハイレベルのビジネススキルだ。あまり真似しないほうが身のためかもしれない。
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