森会長退任問題が暴露した根性論組織の脆弱性 ~リスク管理できない日本的組織

2021.02.16

組織・人材

森会長退任問題が暴露した根性論組織の脆弱性 ~リスク管理できない日本的組織

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

森元総理の失言問題大炎上は、オリンピック組織委員会会長を務める森氏だけでなくJOCの組織そのものへの批判とエスカレートしています。なぜ失言大王だった森氏を会長に頂いたのか、まぼろしの後継として一瞬注目されたこれまた80代の川淵氏といい、日本「的」組織、特にJOCに象徴される巨大組織の悪い面やリスク管理を根性論精神論で乗り切ろうという姿勢が見えます。

・「取締役」という名誉職
スポーツ界だけでなく、日本社会には組織が組織として機能していない面は多々あります。かつて企業社会でも「取締役」は長年会社に滅私奉公で勤め上げた上がりのポストでした。大臣は長年与党で政治家を務めた栄誉でした。昭和の時代には何の知識も能力もなくとも「(官邸に呼ばれて)急に拝命した」と正直に言ってしまう大臣がいくらでもいました。

しかしもう今のコンプライアンスの中で、こんな組織をないがしろにした配置は許されません。上場企業の取締役になれば株主代表訴訟を起こされるリスクもあります。大臣は強力な与党に所属しているだけで、能力に関係なく指名され、あっさりボロを出して即座に退任になる大臣も数々います。

日本のダメ組織の典型的な例が組織委員会であり、名誉職としての取締役や大臣だと思います。能力や責任によって決められなければならない管理者を、組織への忠誠や貢献という意味不明な理由で充てた結果がのきなみ失敗するのだと思います。「余人をもって代えがたい」という理由で推戴された人物が機能したためしがないのはその証左でしょう。森氏や石原元都知事の周囲でもこうした意味不明理由が聞かれました。

・組織の稼働を止めてはならないという当然の危機管理
組織委員会には6人の副会長がいます。なぜ会長が退任した場合、副会長が後を継がないのでしょうか。企業であれば職務代行者順位があり、社長はもちろん、部長が欠けても課長が欠けても組織が動かせるシンプルかつ有効な仕組みがあります。米国大統領も正副2名の大統領が常に別働することで、万一の時に政務を継続でき、さらに下院議長、上院仮議長と継承順位はしっかり決まっています。組織管理の基本といえます。

結局単なる偉い人をとりあえず副会長にしておけ的な、きわめて悪い意味での日本の組織の代表のようなものだといえるでしょう。コロナの終息が見えない中、オリンピック選手や元選手だった役員の方々からは、「選手の夢」や「一生を賭けた戦い」といった自分たちの都合は聞こえても、コロナにどう対処するか、コロナリスクと大会運営の両立という建設的意見は聞けませんでした。そんな人たちが運営している組織は、やはり組織としてはきわめていびつであり、危機管理についても対策できていないものといわざるを得ません。

「オンラインじゃ気持ちが伝わらない」という思考は、コロナ下での出社を強要したり、患者を差別したりする非科学的なものと同一と思います。名誉と管理者能力をごっちゃにするのは、この同一の非科学的思考によるものと断じたいと思います。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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