米中の貿易摩擦が一向に解決の方向に向かわないなか、米国、欧州そしてオセアニア地域などの景気後退が観測されています。 米国のFRB(米連邦準備理事会)は次回FOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げ予想を暗に発表、欧州ではECB(欧州中央銀行)が利上げ時期の先延ばしを発表、オーストラリアではRBA(豪準備銀行)が今月利下げを発表、そしてニュージーランドではRBNZ(NZ準備銀行)が先月利下げに踏み切っています。
米中摩擦のもう一つの当事者である中国の景気はどうでしょうか?
中国は共産党政権が仕切る管理資本主義とも言える経済となっており、その本当の姿が見えにくい面がどうしてもあります。中国の最新のGDP(国内総生産)は、昨年通年の数字で6.6%と発表されているのが最後です。
中国の現在の経済はどのような状態にあるのか筆者は強く興味を引かれているため、少ない情報をもとに推測してみたいと思います。
中国5月製造業PMI
5月末発表となった中国5月製造業PMI(購買部担当者へのヒアリングをもとに景況感をインデックス化したもの)は49.4という悪い数字が出ました。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、2009年以降の数字をグラフ化したものです。これを見ると、米中双方が貿易摩擦で追加関税を課する動きの影響が出ているようにも見え、景気の判断の分岐点である50を5月の数字は下回ってきています。
グラフでは2015年と2016年に50を下回ってきて以来の、非常に悪い流れであると言えます。この数字が更に悪くなる、つまり48の水準にまで到達する局面になると、やはり中国も米中貿易摩擦の影響を強く受け始めたのではないかと推測されます。今月末に発表される最新の数字に注目しましょう。
そんな悪い経済と推測される中国でも、散発的にその兆候を伺える数字が発表されており、中国人の消費動向を伺える数字に小売売上高があげられます。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、小売売上高の推移(前年比ベース)を示したものです。太い青線が名目、細い青線が実質の推移を示しており、共に昨年から今年にかけては右肩下がりの悪い流れを辿っているようです。
これまでのような10%を超える高い小売売上高を示すことが出来る時代は既に過ぎ去った感があり、直近の数字は5月8.6%となっています。内需が冷え込む兆候のある中国経済と言え、それには微妙に米中貿易摩擦が直接間接に影響しているのではと思います。
自動車販売の推移
そこで、代表的な内需の強さが伺える自動車販売の数字を見てみましょう。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、自動車販売の推移を示しています。新車・中古車の販売を含めたものであると推測し、これによると昨年6月以来前年比割れの数字となっています。特に昨年秋以降の米中貿易摩擦が始まった時期以降の販売高の落ち込みが目立ちます。
新車販売に関する数字としては、5月新車販売件数が16.5%前年比で落ち込んでいるとの報道がありました。全体の8割を占める乗用車が17.4%減、商用車が11.8%減となっています。
今後中国経済は悪くなってゆくとの景況感をもつ消費者の悪化心理から、買い控えをする中国人消費者の行動であるのではないでしょうか。
販売悪化が進んでいるのが中国メーカーのようですが、良質な商品を求める消費者行動から日系メーカーのホンダとトヨタ自動車は売り上げを伸ばしています。
中国政府は環境悪化からナンバープレートに制限を設けたり、また電気自動車への乗り換え促進といった政策を打ち出しています。しかし、消費者の行動を上向かさせるまでには至っていないようです。
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