IMF(国際通貨基金)が今月世界経済見通しを発表しました。世界全体の景気減速が次第に明確になりつつある、そんな発表です。
日本を取り巻く世界経済の現状
世界全体で今年の成長予想率3.3%と前回1月見通しより0.2%引き下げました。下記のグラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)を参照ください。上方グラフでは、2000年からの成長率の推移を示しています。2009年の大幅下落はリーマンショックの影響ですが、その要因を除くとプラス成長が今世紀に入って続いていると理解できます。
赤線部分が今年と来年の予想となります。2007年、2008年からは世界経済は減速気味。そして来年には3.6%と再び成長を始めるとの予想となっています。2008年から景気減速見通しとなっているのは、皆さんもご承知の通り、米中貿易摩擦懸念が大きいです。
中国は今では世界第二位の経済大国にまで成長しており、中国製造2025を目標に掲げる習近平国家主席のもと着々と世界進出を掲げ、特にハイテク分野で米国を追い抜かす勢いを感じます。
安全保障上の問題を前面に掲げ、中国通信企業の製品購入を控えるように、日本をはじめとした同盟国に求め包囲網を固めています。米国は中国に対して、中国からの輸品2,500億ドル(約28兆円)分に最大25%の追加関税を課しており、その効果が出始めているとの観測があります。
中国のハイテク製品は、世界中のサプライチェーン(供給網)を巻き込んでおり、その影響が今後世界経済に影響を与える懸念があります。日本は、中国ハイテク製品の部品供給源となっていますので、その意味では日本への影響も心配されます。
グラフから見る今後の予想曲線
下方のグラフでは、主要国の経済見通しを示しています。今年の中国の経済見通しは6.3%と意外にも1月時点から上方修正となっています。今週発表の中国第1四半期GDP(国内成長率)6.4%と、米中貿易摩擦の結果、経済成長率減速懸念は表面上払しょくしているように見えます。
輸出の伸びが18年通年(9.9%)からは大きく減速しましたが、去年秋からの中国政府による減税、インフラ投資、金融緩和といった景気テコ入れが功を奏しているのではと思われます。
また対外的には、「一帯一路」の経済政策強化で、米国の経済が鉢合わせしない欧州、南アジア、アフリカへの政治経済の影響力強化が目立ち、こちらの方向を目指そうとの意図が見え隠れします。
日本の今年の経済見通しは1.0%と1月時点から0.1%下方修正となっています。直近では今年10月に消費税10%へ引き上げが予想され、このことが日本の景況感の見通しをどうしても悲観的なものにしてしまうのではないかと思います。
欧州に目を転ずると、ユーロ圏経済見通し今年は1.3%と1月時点から0.3%と大幅に下方修正しています。英国も同様に0.3%下方修正の1.2%と悲観的見通しです。来年の経済見通しを見ても、欧州では0.2%下方修正して、ユーロ圏1.5%、英国1.4%と悲観的なようです。
ECB(欧州中央銀行)は今年に入り、昨年は政策金利を今年の夏ごろまでは引き上げないと明言していたのですが、それを今年は、年内は引き上げない見通し、そして量的緩和政策の復活を明言しています。
今年に入ってから、ユーロ圏の経済成長の悲観的材料が目立ってきています。今週発表されたユーロ圏4月製造業PMI:47.8と景気の分かれ目50を下回っています。グラフで見る通り、独、仏、イタリアそして英国の景気減速が目立ちます。
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