就活生暴行事件を生んだ真犯人

2019.04.04

組織・人材

就活生暴行事件を生んだ真犯人

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

就職活動中の学生と個人的に会い、性的暴行を加えた一流企業社員が懲戒解雇されました。一件だけでなく他社でも同類事件が起きており、就活学生の身に危険が及ぶ環境が問題視されています。大学のキャリア支援の現場でも学生に注意喚起をしていますが、一方で事件を生む土壌も現在の就活システムには潜んでいるのです。

大学でキャリアを教える立場として、学内の授業であれば、自己責任の重さを伝えています。自分の身を守ることも社会人の義務であり、それができなければ社会人にはなれないこと、そもそも人の弱みに付け込む手合いは社会にいくらでもいることをしっかり伝えます。

くれぐれも異性社員と密室で2人きりになったりしないことや、2人で酒を飲むようなこともすべきでないと話しています。こうした適正な距離感を教えるところまでが学校の出来ることであって、それ以上の行動まで拘束は無理でしょう。しかし万一報道されているような、大学自らがOB訪問での、過度な個人的関係性を推奨しているとすれば、それは大きな責任問題だと思います。そんな大学はないことを祈るばかりです。

4.企業の責任
人事部門が正式に任命したリクルーター社員などであれば、こうした犯罪行為に手を染める可能性はほぼ無いだろうと思います。問題を起こすのは、人事命令でも何でもないボランティアでOB訪問を買って出る一般社員です。しかも自分自身がまだ就活から数年しか経っていない、恐らく面接官など務めたこともない平社員であっても、会社システムを知らない学生から見れば、皆一流企業社員に見えます。

今回の暴行犯人は懲戒解雇されましたが、企業はこうした動きに特に敏感になる必要があります。バイトテロ同様に、企業の存亡にかかわる重大な信用問題となるリスクを、一部とはいえ抱えているのです。

格差社会の定着した日本で、一流会社社員は確実に差を付けた側です。その強烈なエリート意識や万能感を勘違いする馬鹿者を、絶対に出さないよう十二分にコンプライアンス研修を徹底しなければならない事態となったといえるでしょう。悪いのは犯罪を犯した本人ですが、それをのさばらせる環境も、こうした事件の土壌だと思います。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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