原油価格が上昇を続けています。アメリカの政治模様、つまりトランプ大統領の思惑が強く反映しているのではないかと筆者が考えています。その論拠をこのレポートで検証し、推測を進めてみたいと思います。
そこで筆者は下記のグラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)で、米国ファーストという米国の利益優先を政策の最優先とするトランプ大統領の政治的・経済的思惑を垣間見た気がしました。グラフは、米国の原油の輸出量を2013年から現在に至るまでを示しています。
これを見ると2016年までは、50万バレル(日量)前後であったところが、2017年からは急速に輸出量が右肩上がりとなり、現在は300万バレル(日量)まで達していると言えます。トランプ大統領がこの数字と傾向を確認したかは定かではありませんが、着実に原油輸出を増やしていることがわかります。
貿易赤字解消のため、日本にも負担を強いる?
現在米国はトランプ大統領のもと、巨額な貿易赤字を解消しようと、あらゆる策を駆使しています。特に対中国の貿易赤字を減らすために、関税を課す方針を明確にしています。欧米、日本を巻き込んだ貿易摩擦は過激化しています。
そして、相手国の輸入を増やすという意味では、米国産原油輸出も一つの解決策であるとトランプ大統領が考えていても不思議でないのです。原油高が続く中、中国に対して、イラン産原油の輸入から、米国産原油の輸入に切り換えるように圧力をかけることも選択肢の一つではないかと思いますが、中国は明確に拒否の姿勢のようです。
ディールが全てのトランプ大統領。日本にもこの方式を求めてくることも考えられるのではないかと思います。
米国内の原油生産の現状を見てみましょう。オバマ政権時にシェールオイル・ガスの生産が話題となりましたが、原油価格が50ドル(1バレル当たり)を下回る低価格の時代が続きました。地下の岩盤を圧縮し原油・ガスを抽出するシェールオイル・ガスの掘削方式では、掘削に莫大はコストがかかり、およそ50~60ドルが採算ラインと言われているのですが、現在の原油価格は採算ラインを越えてきている状態です。
そして、シェールオイル・ガス掘削の業者は、トランプ大統領の支持基盤である共和党白人層の多く住むテキサスなど南部が多いと言います。トランプ大統領は、カナダへの原油パイプラインの建設再開を許可したことは有名です。
そして、中国を含めて、イラン産原油の輸入を各国に禁輸を要請し、米国産原油つまりシェールオイルに切り換えるように要請することが選択肢に入ってくることも考えられます。米シェールオイル・ガス業者を喜ばせることになり、そしてトランプ大統領は、今年11月の中間選挙では民主党よりも優位に立てるとの打算が働くのではと思います。
商品全般を見ると、興味深いことが分かります。リスク回避の有力商品である金価格は、現在1,250ドル(1オンス当たり)であり、一時の1,300ドル以上の水準からは、低位に位置します。ドル金利が上昇していることから魅力が薄れていることも関係しているのですが、リスク回避の金融市場には至っていないとも解釈できます。
そして商品相場の総合指標であるCRB指数は上昇傾向にあるものの、200の水準を下回っていて、その意味では原油が現在商品相場の中では独歩高にあると言えます。
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