劇作家・演出家として活躍する鴻上尚史さん。 現在発売中の『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)の著者でもある鴻上さん。 戦時中の徹底した上意下達の組織の中でも、特攻という行為を否定し、「無理に死ななくてもいい」と言った特攻兵と上官たちとの関係性を通してみることができる、現代社会の働き方やリーダー論について語った。
チームをデザインする際に大切なこととは?
「チーム作りの話に関連して、先日、サッカー日本代表のハリルホジッチ監督が選手とのコミュニケーション不足を理由に突然解任されるということがありましたが、演劇界でもそういうことってあるんでしょうか?」と、タケ。
僕は幸い今まではなかったけれど、と前置きしながら「そんな例は山ほどあるみたいですよ」と鴻上さん。
役者側の座長が、あの演出家ではダメだと言い出してプロデューサーに「僕を取るか演出家を取るか」と迫ると、たいていの場合プロデューサーは俳優を取るらしい。
そんなことにならないためには何が必要なのか?
「コミュニケーション力だけでもダメでしょうね。少なくとも僕は、コミュニケーションも大事にしながら、時には耳に痛いことも言う演出家でありたい」。
劇団の公演は毎回参加メンバーが変わる。そのたびに新たなチームとして動くことになるが「結構な確率でベストチームになる」という。
その理由として「事前に必ず評判をチェックする。つまり、性格がいいかどうかを確認するんです」。
ここで言う「性格の良さ」というのは、「無駄かもしれないトライアルをやってくれるかどうか」だ。表現というのは最短距離でゴールにたどり着けるものではない。三日間稽古をしたけれど、全部無駄でしたなんてことも起こるのが芝居の世界なのだ。
「それを面白いトライアルだと思ってくれる人か、三日間を返せ!と感じる人か」を見極めることが大切になる。
「試行錯誤やトライアルを楽しめない人は、仕事がなくなっていくでしょうね。だって、それじゃあいいものは作れないから」。パターンで作ってもつまらない。「今まで観たことのないものがここにはある」と観客に思ってもらうためには試行錯誤が必要で、それが表現を追求するということだ。
「チーム作りには作戦が必要」という鴻上さん。
チーム力は総力戦だから、個人の資質だけではなくチーム内でのバランスや力関係も大事な要素になる。
「ものすごく性格は悪いんだけど切れ者のやつと、すごく性格がいいんだけどあまり賢くない人。仕事はできないんだけど宴会部長としては最適なムードメーカー的存在や仕事はともかく若い者の面倒見が良いやつ。総合戦力を考えつつ、地盤沈下しないようなチームをデザインしていくのがチーム作りです」
そして、大事なのは、一人一人を「知る」こと。そのために、一人ずつとじっくり飲んで話をする時間を必ず作るようにしている。
「試行錯誤ができる組織」がいいという鴻上さん。
「全く働いてないけど、あの人はいったい何をしてるの?という組織はいい組織です。どうしようもない人間も抱擁できる組織は余裕のあるいい組織です」
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