アメリカンフットボール部の悪質犯則事件の炎上は留まるところをしらない様相を呈しています。危機への対処を初動から大学側が間違えた結果、火はボンボンと燃え続け、就活のピークを迎えようとしている圧倒的大多数である、事件とは全く関係のない一般の日本大学学生にまでその火の粉は降りかかっています。
守りに徹することは、炎上という制御が利かなくなった環境下で取るべき数少ない戦略です。イチかバチかの勝負をかけるタイミングではなく、「少しでも良い方」ではなく「少しでも批判が起きない方」という消極策を取ることです。学部長メールも、変に「学部長」とオリジナルな味付けをするくらいなら、始めから学長名で発信して「事務的」批判を受ける方がまだましという、きわめて消極的な判断こそすべきことと思います。
・日大生の就活も「守りの戦略」で
今就活ピークを迎えている日本大学学生にとっては、この事件の火の粉が降りかかってきていることでしょう。どう対応すべきか、これまた被害をゼロにするとか、この話題で高評価を得ようという積極策は取らず、「守りの戦略」に徹すべきです。
面接などで面接官や応募先企業の人からこの話題を振られても、一発ホームランのような名言をいおうとしなければ良いのです。全否定も全肯定もせず、当たり障りないノラクラした内容に徹します。結果としてこの話題の印象が残らないことこそ、守りの面接の勝利だといえるでしょう。
どれだけ工夫したところで、大学側を擁護しても批判しても、説明は難しくなります。そんな不利な戦いに自らはまる必要がありません。さらにいえばこの問題への意見によって少なくとも採用が確定することは考えられません。しかし説明の持って行き方を間違え、妙な大学批判にすれば組織対応や組織への忠誠心など非常にめんどうな流れになる恐れがあります。
反則をした選手の会見はすばらしいものでしたが、そっちに話を持っていったところで組織における内部通報者の扱いのような、これまたものすごくめんどくさい領域に行ってしまう可能性があります。正しい行為である内部通報者が批判され、退職に追いやられるような理不尽も社会では存在しています。
・事件より恐れるべきは自分のメンタル
決してうまい説明やきれいごとをいおうとせず、ノラクラとおざなりな会話に終始という消極作戦で十分戦えます。「マンモス大学なんで自分とは関係ない世界のことのように感じます」的な、他人事コメントなども良いでしょう。それで責任を追及される恐れはありません。アメフトとも大学執行部とも何の関係も無い一般学生に、不祥事の対処責任を問い詰めるような愚かな面接官だとしたら、その会社はやめておいた方が良いです。
一番大事なのは、自らの気持ちに負けないことです。学長や理事長でもない一学生が、大学を背負っている訳ではないのに自分が批判されていると感じたり、自分の言うこともあたかも事件当事者への批判のように聞く耳を持ってもらえないのではないかと疑心暗鬼に陥らないようにしなければなりません。
面接はコミュニケーションの場。ただでさえ緊張して思うように進まないのが普通である面接の場面で、自分で自分を縛ることこそが最大の危険といえるでしょう。事件と一般学生は何一つ関係ありません。責任も一切ありません。他人事のようにノラクラやり過ごすことが自分のミッションだと心得、ぜひ就活クライマックスに臨んで欲しいと思います。
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2018.08.06
2009.02.10
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。