個人商店から事業組織へと発展する過程において、「ミッション」の策定は必須事項となります。
以前、ある経営者の方と食事をする機会がありました。
その方は、個人で輸入卸業を数年つづけたのち、
社員を雇って会社を大きくしていった創業経営者。
ざっくばらんに話をする中で、
当時の会社の問題を説明されていました。
その中で、社員の能力・スキル、仕事への姿勢、離職率の高さなどに関して、
随分不満を持っている発言が目立ちました。
そして、今後の課題として、採用や社員トレーニングの話をされたので、
私は「事業のミッション」を聞いてみました。
すると、
「そういうのは、あんまり好きでないんですよ。白々しいというか・・」
といった反応でした。
ここで私は、「そんなことでは、経営者失格です!」
といいたい訳ではありません。
そういう発言が出ることも理解できます。
心の底から出ている発言かは別として、
全ての人が、高尚な理念・想いから事業を始めるわけではないからです。
中には、事業を始めたのは、「このビジネスは儲かりそうだから」とか、
「たまたまチャンスがあったから」ということもあるでしょう。
個人商店としてそのまま商売を続けていくのであれば、
ミッションとかわざわざ言わなくてもいい。
個人の商いとして、利益とチャンスを追いかけ続けるというのもありかもしれません。
「事業の目的=自分の儲け」の世界で、そこそこの事業規模で活動していく。
実際にそれを選択する人も沢山います。
でも、組織として事業経営を行なうことを選択するとなると、
別の次元の話になります。
従業員は、社長の個人的な富のために、
情熱を持って仕事などしてくれません。
お金で繋がった最低限の労働力を提供するに留まります。
これでは、事業を組織化してよりレバレッジを効かそうと
リスクを負って投資したのに、固定費が増えただけで、
期待するリターンを見込めません。
むしろ、面倒なことが増えただけです。
人の集まりである組織が、顧客価値と利益を生みだす
事業システムとして機能するためには、「共有するミッション」が必要です。
ところで、ここでまず、言葉の定義を確認しておきましょう。
というのも、似たような言葉が、人によって微妙に違う意味で使われているので、
私が使う場合の意味合いを伝えておきます。
「ミッション」・・事業を行なう目的、事業の存在意義(「理念」とほぼ同意語としています)【Why】
「ビジョン」・・ ミッションを実現させるために具体化した事業領域(範囲)とその将来像(定量・定性)【Where】
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