米国・ハーバード大学でロジャー・フィッシャー教授が1970年代後半から展開した「交渉学」。 「交渉術」といえば、「交渉相手をこちらの主張に従うよう説得したり、丸めこんだりするスキル」といった捉え方が日本では広まっていますが、本来の「交渉学」は「交渉スキル」に偏ることなく、対話を通じて本当の意味でのWin-Winな解決策を探り、交渉相手との継続的な信頼関係の構築を目指すものなのです。
このコースの特徴は、模擬交渉で実践経験を積む点にあります。模擬交渉では受講生が2人1組になり、交渉の状況や役割設定を説明したケースのシートを事前に読んだうえで交渉に当たります。模擬交渉のケースは実際に日本であった出来事を下敷きに書かれており、リアリティーのある状況で、学んだ交渉学のエッセンスを体感できるようになっています。実践を重視しているのは認定試験も同様で、1次試験はWebを使った筆記試験ですが、2次試験は模擬交渉による実技を評価します。
人工知能には難しい、交渉による解決
交渉学を学ぶことは、現代のビジネスパーソンにどのような意味があるのでしょうか。人工知能の発達により、これまで人間が携わっていた仕事が、どんどん機械にとって代わられるといわれていますが、「交渉による解決は、人工知能による代替が最も難しい仕事でしょう」と田村氏はいいます。問題には必ず一つの正解があり、その正解に早く到達できる人ほど優秀だという状況では、どれだけ知識を蓄積しているかがものを言います。「人工知能に東大の入学試験を解かせるプロジェクトがあることからもわかるように、知識の蓄積は、人工知能が強みを発揮する分野です」
ですが実際のビジネス環境では、必ずしも明確な正解が存在せず、多様な価値観をもつ相手と対話を重ねて、相手の主張や考え方をくみとっていく必要があります。さらに自らの主張や考え方と重ねあわせながら、双方が満足できる解決策を思考することが求められます。「交渉学を学ぶことで、それらを実現する手法を身につけられます。人工知能に簡単にとって代わられない人材の育成につながるのです」(田村氏)
あらゆるビジネスパーソンに必要な現代の教養
「交渉」というと、営業担当者が顧客と商談する場合など、会社の外部との話し合いで役に立つイメージがあります。ですが、交渉学の真髄が「対話を通じた、賢明な合意の形成」にあることがわかれば、その活用場面は会社の内外にかかわらず、話し合いを通じた合意形成が必要なあらゆる場面、あらゆる業種や職種で必要だとわかります。「人ならでは」の仕事に取り組む人材の育成に向けて、交渉学は現代ビジネスパーソンに必要不可欠な教養となるのではないでしょうか。
実践交渉学認定プラクティショナー養成コース(個人用申し込み)の受講料は4回で15万2,000円(税別)。認定試験受験料は1次5,000円、2次25,000円(税別)。交渉学協会のウェブサイトはこちら。http://negotiaclub.com/
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人材育成
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