セクハラ疑惑が持ち上がったことで辞任に至った財務省の福田次官。アメリカのMe Too運動など、ハラスメントに対する意識が急速に大きくなった現在。トップ官僚だけでなく政治家、社長などなど社会的に高い地位にある人がなぜ続々と「やらかす」のでしょうか。
1.ハラスメントの現状
人事コンサルティングの課題として、ハラスメント対応は昔からありました。私はクライアント先での相談だけでなく、専門誌や一般紙でのコメント取材などさまざまな場で人事課題としてのハラスメント対応について解説しています。
セクハラだけでなく、パワハラも深刻な問題となり、裁判や損害賠償など起こっています。一方で何でもかんでもハラスメントとレッテルを貼り付け、息苦しい社会になったという声も出るなど反作用も起きるくらいに、認知は広がっているともいえます。
職場の問題としてのハラスメントは昔から存在していました。ハラスメントの存在が急に注目されるようになったのは、その発生件数が増えたというよりは、存在が明らかにされることが増えたと考えるべきでしょう。SNSやインターネットをはじめ、被害者が情報発信する手段が圧倒的に増え、さらには社会もそうした声を拾い上げる体制が進んでいることが挙げられます。
2.ハラスメントをロジカルにとらえるエリート思考
財務省トップの事務次官や大企業社長といった超エリートがハラスメントで糾弾されるのはなぜでしょう。大きな理由の一つはそうしたエリート層の「頭の良さ」が原因ではないかと思います。
社会的に成功した人々は学歴も高く、論理的思考に基づく判断力に優れている人が多いはずです。学歴が高いことが人間の価値ではないと言いつつ、いまだに学歴フィルターのような、学校名で就活学生を選抜する企業が存在するのも、受験の結果という成果が頭の良さを図る尺度として信頼されているからでしょう。
そういった受験の頂点に立つ大学を卒業し、社会においても成功を遂げた人たちですから、ハラスメントについてもロジカルに考えてしまいます。「証拠が無ければ犯罪が成立しない」という考え方はきわめて筋が通っており、言ったもん勝ちで騒ぎを起こすような理不尽な申し立てなどあり得ないということでしょう。セクハラでもパワハラでも加害者とされる側の言い訳はほとんど常に「そんなつもりはなかった」というものです。
3.ハラスメントの取り扱い方
ハラスメントにおいて、加害側の意図は関係ありません。では冤罪含めて言ったもの勝ちではないかという反発がありますが、ハラスメントは単純に行為の有無だけではなく、心情の問題です。ある意味受け止める側の一方的な心情であることは十分可能性としてあり得ます。事実を争うというロジカルな思考では、こうしたデリケートな心情部分のような、あいまいで非定型な存在に対処できないのです。
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2018.07.02
2018.08.06
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。