ロバート・カッツが半世紀以上も前にその重要性を指摘したコンセプチュアルスキル。このシリーズは、物事の本質をとらえる抽象化・概念化の思考をどうみずからの仕事や事業、キャリアに生かすかを考えていきます。
成功したり失敗したりする本質・原理は何だったのか。それをつかんだ後は、再度、〈フォーム〉次元に下りていき、具体的な行動・方策・教訓に変換します。
この一連の[1]抽象化→[2]概念化→[3]具体化の流れを私は、「π(パイ)の字思考プロセス」と呼んでいます。コンセプチュアル思考の基本となる思考フローの形です。
◆型の奥にひそむ本質をつかめ
「守・破・離」という成長段階の概念もまた、〈フォーム〉と〈エッセンス〉の往復です。「守・破・離」が用いられる日本の伝統芸能や武術の世界では、「型」の修得が重要な鍵になります。弟子はまず師の所作を外側からながめ、真似ることから始めます。すなわち型という〈フォーム〉次元から入るわけです。
やがて弟子の中で、型の奥にある〈エッセンス〉をつかむ者は「守」の段階に入り、師の型を修得することができます。そしてさらに、高次の抽象を行い、高次の原理をつかむ者は、教わった型を打ち破り自分の型を生み出すことができます。それが「破」のフェーズです。さらにまた高次に至ると、ついには型から自由になる境地を会得します。これが「離」のフェーズです。
その一方、型を表面的になぞるだけで〈フォーム〉次元に留まる者は、「型っぽい」ものを行うだけです。
私たちの仕事やキャリアにも、この形態と本質の2つの次元は存在します。〈フォーム〉の次元だけで形態に目を奪われ右往左往するのでもなく、〈エッセンス〉の次元に閉じこもって観念論に終始するのでもない。2つの次元を大きく往復することで、大きな答えが生み出され、大きな道が拓かれることになります。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
仕事・事業に新しい概念の光を入れる『実践コンセプチュアルスキル』
2018.01.08
2018.02.02
2018.03.11
2018.08.20
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。