実践コンセプチュアルスキル[1]~不変の価値軸は何かを考えよ

画像: frontriver

2018.01.08

仕事術

実践コンセプチュアルスキル[1]~不変の価値軸は何かを考えよ

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ロバート・カッツが半世紀以上も前にその重要性を指摘したコンセプチュアルスキル。このシリーズは、物事の本質をとらえる抽象化・概念化の思考をどうみずからの仕事や事業、キャリアに生かすかを考えていきます。

技術や方法といった「変わるもの」をずっと追っていくと消耗します。しかし、そんなときこそ、まなざしを「変わらないもの」に向けることが肝要です。

つまり、あなたは(あなたの担当する事業は)、何の価値をお客様に届ける存在であり続けたいのか?という不変へのまなざしです。

例えば、「私(私の担当事業)は音楽を持ち歩いて楽しむライフスタイルを提供する職業人(事業)でありたい」というふうに自己を定義すれば、技術の変化から解放されます。その提供価値を実現するために、いまはたまたまこの技術を用いればいいんだな、将来はあの技術かもしれないなと、技術に振り回されない態度がそこにできあがるからです。

◆不変のものにまなざしを向ける「提供価値宣言」ワーク
私が日ごろ行っているキャリア開発研修やコンセプチュアル思考研修の中に、「私の提供価値宣言」という内省ワークがあります。

下のシートの空欄にあなたはどんな言葉を入れるでしょう。

この宣言は、あなたという職業人は何の価値を世の中に提供している存在か、あるいは、あなたの担当する製品・サービスは何の価値を核にして売っているのか、を考えるものです。

例えば、保険会社の営業マンは「もしかのときの経済面での安心」を売っていると言えます。また、新薬の開発者であれば「その病気のない社会」を売っているととらえることができます。財務担当者は「数値による企業の健康診断書」を売っているのかもしれません。

スポーツ選手であれば、「筋書きのないドラマと感動」を売る人たちでしょう。コンサルタントは「専門の知恵と手間ヒマの短縮」を売っている。料理人なら「舌鼓を打つ幸福の時間」、コメ作りの農家の人なら「生命の素」といった感じです。

私の場合、研修サービスを生業にしていますが、自分自身の提供価値を次のように考えています。

 〇私は仕事を通し、
 「向上意欲を刺激する学びの場」を売っています。

 〇私は仕事を通し、
 「働くとは何か?に対し目の前がパッと明るくなる理解」を売っています。

 〇私はお客様に
 「働くことに対する光と力」を届けるプロフェッショナルでありたい。

私にとってこれらの提供価値はもはやライフワーク的テーマであり「変わらないもの」です。この価値を満たすために、技術や手段として、対面型の集合研修を用いるかもしれないし、eラーニングのような個別デジタルツールを用いるかもしれない。あるいは、本を書いてもいいし、この記事のようにネットに掲載してもいい。それらは「変わっていく」ものです。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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