なぜ神戸に半殺しの生木を吊してはいけないのか:震災死者を冒涜する#世界一のクリスマスツリーの売名鎮魂ビジネス

2017.12.14

ライフ・ソーシャル

なぜ神戸に半殺しの生木を吊してはいけないのか:震災死者を冒涜する#世界一のクリスマスツリーの売名鎮魂ビジネス

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/6434名(内閣府集計)。そのうち、9割は、15分以内の「即死」だった、とされた。しかし、15分だ。声を挙げ、助けを呼び、息絶えるには、あまりにも長い。そして、残りの1割、403名は、あの瓦礫の下で生殺しにされ、生きながら赤い炎で焼かれた。でも、あのとき、我々は、なにもできなかった。そして、逃げた。だから、もう繰り返したくないのだ。/

 6434名(内閣府集計)。そのうち、9割は、15分以内の「即死」だった、とされた。しかし、15分だ。声を挙げ、助けを呼び、息絶えるには、あまりにも長い。そして、残りの1割、403名は、あの瓦礫の下で生殺しにされ、生きながら赤い炎で焼かれた。でも、あのとき、我々は、なにもできなかった。そして、逃げた。だから、もう繰り返したくないのだ。

 あの日の悔しさと罪悪感、東京のマスコミへの怒りの封印を、あの木は再びこじ開けてしまった。やつらは、木なんて、どうせ切られるものだ、と言う。それは、人なんて、どうせ死ぬものだ、と言うのと同じ。他人の不幸、よその災害をネタに騒ぐ東京のマスコミ、震災を忘れた東京の人々の本音。しかし、たとえ切られ、たとえ死ぬとしても、そこには命を終える尊厳がある。生き残った者には、死んだ家族、隣人、友人の尊厳を守る意地がある。


 広告代理店は、ソリューションだかなんだか、あの時代よりはるかに小賢くなった。先回りして、テレビや新聞、雑誌を出稿で口封じ。目立たぬよう、あえてほどほどの反対記事を出し、ネットの掲示板も1001まではあえて書き込ませ、しかし更新はさせない。御大尽のスポンサーを隠しつつ、他国の情報会社や宗教団体まで煽動に総動員し、数字を持っているヤツを投入して、物事を知らない連中を数だけ動かす。

 とはいえ、それにしても、最近、筋が悪すぎないか。ニセ料理人、ニセ科学者、ニセ作曲家、ニセ書道家、ニセ外国人、ニセアイドル、ニセタレント、ニセデザイナー、ニセチューバー、ニセアーティスト、ニセの善意とニセの正義を騙る自惚れ屋のお友だちのニセの努力とニセの感動の物語ばかり。すぐに化けの皮が剥がれる。担がれる方も、セルフプロデュースなど、頭、だいじょうぶか。代理店なんて、高く、高く胴上げをしておいて、風向きが変われば、さっと、いなくなるぞ。その代理店の中だって、仕掛け人を気取っていると、やはり風向き次第で、すぐにトカゲの尻尾切りだ。

 「神戸ルミナリエ」でさえ、もう止めよう、との声がある。それは震災を忘れたからではない。あのまばゆい光、多くの観光客こそが、人々の記憶から震災を忘れさせてしまうのではないか、と恐れているのだ。すでに神戸は復興を遂げ、有り余る光に溢れている。だが、それは、いつかまた失われるかもしれない。

 あの日、テレビが消え、新聞も無くなり、壊れた家の木々を焚いて暖をとった闇の中で、ようやく目の前にいたホンモノの家族の、隣人の、友人の目を見た。だが、その目の先にあった多くの目は、失ってしまった後の影でしかなかった。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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