大学就職ランキングというナゾ

2017.12.06

組織・人材

大学就職ランキングというナゾ

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

空前の売り手市場で学生優位な環境が続く就職状況ですが、大学としては受験・入学者数にも影響する大きな問題であり、学生や親、さらに大学関係者などから「就職ランキング」的なものにはかなり注目が集まります。しかしこの種のランキングって意味あるんでしょうか?そのレーティング(格付け)への信頼は?

就職率そのものに統計的以外の意味があるかどうかは、その数値の対象にあります。予備校の合格率と似ていますが、Fラン含むどんな大学もひっくるめての合格率では意味がありません。東大とか早慶とかMARCHとか旧帝とか、対象を難関大に絞っての合格率ならずいぶん価値は上がります。

さらに統計では母数の取り方も重要です。元々優秀な東大特進クラスだけを母数にするのと、明らかにだめな学生を全部含めた母数では、その意味は全く別だからです。予備校関係はこうした率の水増し(逆に母数を絞ってパーセンテージを上げる)にはずいぶん厳しくしているようなので、昔と違って今どきの合格率はそれなりに正確なのかも知れません。


4.そもそも就職「率」がおかしい
就職率はもっと操作が容易です。母数を誰にするかで数値が大きく変わるからです。私は長年理工系大学で教員を務めてきましたが、旧帝中心に、国立理系学生の9割近くが大学院に進学します。週刊誌などでも見かける就職率ランキングに「あれ?あの有名大学は?」という事態が起こるのは、「学部就職率」で図った場合です。

当然トップ理工系学生は学部で就職する学生が例外的なので、学部卒を母数にしてしまうと就職率が極端に下がるというカラクリです。同様に、就職が難しそうな学部生を無理矢理院に進学させてしまえば、学部就職率は当然上がります。「就職希望者」だけを母数にしてしまえば、体調その他でやはり就職が難しい学生も母数から外せます。博士後期課程学生の就職率といわれても、必ずしも3年で課程を修了できるとは限らない現実があり、やはり母数設定ができないのが現実なのです。

結局新聞や雑誌などの文字ソースがすたれ、ネットニュースだけが独り歩きするようになり、こうしたランキングはイキイキと活躍できるようになりました。「就職率〇〇%!」「就職ランキングNo.1!」などのキャッチコピーがいくらでも打ち出せるため、これまで以上に露出を高めそうな勢いですが、重々数値を吟味して判断することが大切です。

あと、学生諸君。就職環境がどれだけ良くても、あなた個人の就職が保証されてる訳ではないこと、絶対に忘れずに、ぬかりなく準備を進めて下さい。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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