日本で初めての北海道ナチュラルチーズ専門店「チーズのこえ」を清澄白河で経営している株式会社FOOD VOICE代表の今野徹さん。 「食べるもので人を健康にしたい」と食のルーツに興味を持って北海道庁に入り、農林水産省へ出向。独立したあと、北海道で作られたチーズの存在を知らず、酪農への無関心につながるという、“知らない連鎖”に歯止めをかけたいと「チーズのこえ」をオープン。食べ物の声なき声を伝えたい、食卓に上がるまでにかかわったすべての人・モノを大事にしたいと熱い思いを語る今野さんの見据える夢についてタケ小山が迫った。
「ゴールはまだずっと先」
「チーズのこえは、まだ夢への第一歩です」と語る今野さん。
「これまでは専門性が高くて閉鎖感があったチーズの世界を、商店街の八百屋や肉屋みたいに訪れるお客さんの日常の生活に寄り添って提案していけるものに変えていきたい。それを端的に表すものとして『コンシェルジュ』と名乗っています。こういう店のあり方が一つのチャレンジとして成功していくことが、生産地と食卓をつなぐ小売業という新しいモデルロールになることを願っています」
今野さんにとって「チーズのこえ」はゴールではない。まだまだ先に大きな夢がある。
「その夢って何ですか?」と聞くタケに、まっすぐな視線で今野さんはこう答えた。
「世界平和です」
「でかすぎないですか?」と驚くタケだが、今野さんは動じない。
「食というのは、たとえば戦争になったときには兵糧攻めという言葉もあるように、重要な戦略物資となる。将来的に農業がずっと続いていって、世界中の人が飢えないようにするためには、日々の小さな買い物が大事なんですよ」
今野さん曰く「全部つながっているんです」。世界はみんなつながっている。北海道のチーズを買うことで、北海道の酪農家を救うことになる。北海道の酪農家が育てた子牛が全国の酪農家の元に行き、生乳をつくる。
全国の酪農家がいることで、飼料を育てる農家が助かる。エサを輸入する必要がなくなれば、その分のエネルギーも必要なくなる。エネルギー用に消費されるトウモロコシを飼料に回せば、ブラジルの農家が牛を飼えるようになる…とつながっていけば、世界から貧困をなくし、やがては世界平和にもたどりつける…。
北海道のチーズを買うことが、ブラジルの農家の生活に影響する。まるでわらしべ長者のようだが、すべてはつながっているのだ。
「ずっとこの食べ物が続いていってほしいな、そう思って買い物をしてほしい。買い物というのは、賛成や共感や応援の一票を投じることなんです」
主語を「I」で語りたい
今後の夢の一つとして、今野さんは「システムから生活を取り戻すこと」を挙げる。
利便性を追求する現代のライフスタイルの中ではマニュアルが優先されて生活が空洞化している。
「手触りのある生活を取り戻したいんです」
食生活においても「本来、経済発展の中ではエンゲル係数は低くなっていくというのが経済学の常識なんですが、仕込んだ味噌が出来上がるまで長期間待つというようなことが昔から行われてきた日本の食文化においては、経済が豊かになるとともに、食に対してもっと時間やお金をかけるようになるというのがあるべき姿なんじゃないでしょうか」。
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