/大量のラーメンで「栄養」を摂っているつもりも、そんなの、体に悪いだけ。どうでもいい情報ばかり集めていても、バカは拗れるばかり。知って気づいたことを身につける、自分を変えていく勉強でしか、自分自身の問題は乗り越えられない。/
ベートーヴェンは、絶大な評価と人気を得て、交響曲をいくつも書き、その九つ目の第四楽章に至ってなお、自分の書くべきはこんな音じゃない、と自分を全否定し、その向こう側へと乗り越えて行った。ただ、こんな未熟な自分は、まだ自分じゃない、もっとりっぱな、もっとしっかりした自分になれるはずだ、と、いまの自分を否定できるやつだけが、前に進み、上に登れる。
でも、前に進み、上に登って何がある? 今を楽しまなくて、何が楽しい? そうそう。たしかに、それはそうかも知らんねぇ。だけど、いまの自分に納得できずにリストカットを繰り返し、ダメ仲間同士で傷をなめ合い、他人のフリのコスプレに明け暮れてムダに時を過ごし、人が唯一注目してくれていた若ささえも失って、ただ老いさらばえていくくらいなら、苦しい思いをしながらも、一歩、一歩、山を登っている方が、生きていることも実感でき、世間の展望も開けて、自分が進むべき方向も見えてくるものだよ。
他人や世間のあれこれを知って、うらやんでも、けなしても、自分の腹の足しになるわけじゃない。不平不満ばかり言っていても、それで世の中が君の機嫌を取ってくれるわけじゃない。今が嫌でも、昔に戻れるわけじゃない。この自分は、これからどうしたらいいのか。生きて、この世で何ができるのか。就職も、結婚も、仕事も、子育ても、そして、老いるのも、病むのも、すべてが勉強。うまくいかない自分の方を否定して、問題に気づき、新しい自分自身を作り上げていくことでしか、それを乗り越えて行く道は無い。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。近書に『アマテラスの黄金』などがある。)
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2020.06.26
2020.07.07
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。