マーケティングというと、3CだとかPEST、5FにVCにSWOTだSTPだ4Pなどなど、さまざまな特殊用語が出てくる。これらの用語は決して言葉遊びの道具ではない。使い方を理解した上で使いこなせば、マーケティングを考えるための強力なツールになる。そこで前回の3Cに続いて、今回はペストすなわちPEST分析について紹介する。
ペスト(PEST)のSは、Socialすなわち社会動向である。未来を予測するのは難しいが、一つだけ確定している未来のあることは頭に入れておこう。10年後の20歳人口は、既に決まっているのだ。
産業構造激変のおそれ
AIが何をもたらすのか。IoTにより、どんな影響を受けることになるのか。この2つには、これからビジネスを行っていく上で最大限の注意を払う必要がある。
そもそも、人間が行う仕事の約半分は、AIに取って代わられるという。実際に半分行くかどうかはともかくとして、オックスフォード大学の研究者により、702の職種が吟味された論文にそう書かれているのだ。自社の業務をAIが代替してしまう可能性については、今すぐにでも検討すべきだろう。今まさに、こうやって書いている原稿自体も、そのうちAIがやってのけるではないか。そんな危機感を筆者は持っている。
さらに恐ろしいのがIoTである。Industry4.0とかIndustrial Internetという言葉が、一種の流行語になっている状況が象徴するように、モノづくりが根底から変わってしまう可能性が高い。とりあえず、IoTがこの先どのように普及していくのかは、特にモノづくりに関わる経営者なら見過ごしてはならない。
仮にトヨタがIoTを全面的に導入するとなった場合に、どうなるかを想像してみよう。IoTに対応できない下請け企業は、その瞬間に仕事がなくなるリスクがある。IoTはサプライチェーンを一気通貫で支配する。自動車の部品のパーツを作っている企業にまで影響は及ぶ(可能性が高い)。
ペスト(PEST)のTは、Technologyすなわち技術の進歩である。技術の進歩はビジネスを根本的に変える。これはインターネット普及以前と普及後に、どれだけ世界が変わったかを振り返れば簡単にわかること。AIとIoTはインターネットの普及に等しい革命を起こすだろう。
革命は、何もピンチになるだけではない。その昔、自動車が発明されて馬車が廃れたときに、ある企業は業態転換することで素晴らしいブランドになった。馬具メーカーのエルメスである。同社は馬車が自動車に代わることで、長距離旅行が増えると予測した。この予測に従い、馬具ではなく旅行用カバンなどに事業転換して大成功した。
何かが変わるとき、必ずそこにチャンスが生まれる。事業を継続的に行っていくなら、ペスト(PEST)に常に注意しておきたい。
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2015.07.10
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