マーケティングというと、3CだとかPEST、5FにVCにSWOTだSTPだ4Pなどなど、さまざまな特殊用語が出てくる。これらの用語は決して言葉遊びの道具ではない。使い方を理解した上で使いこなせば、マーケティングを考えるための強力なツールになる。そこで前回の3Cに続いて、今回はペストすなわちPEST分析について紹介する。
風が吹くと桶屋が儲かる
なぜ、風が吹くと桶屋が儲かるのか。ちょっと復習しておこう。風が吹くと砂ぼこりが舞う。砂ぼこりが目に入ると、目を患ってものを見えなくなる人が増える。目の見えない人は三味線弾きになる。三味線をたくさん作るためには、猫の皮が必要になる。猫がたくさん殺されると、天敵がいなくなったネズミが増える。増えたネズミが桶をかじる。桶が壊れると、桶に対する需要が増す。だから桶屋が儲かる。
なんとも回りくどい話だが、この諺からぜひ学んでおきたいことが2つある。
その1、因果関係が巡り巡って、思わぬ結果を招くことがある。
その2、時間が経つと、必ずいろいろな条件が変わってくる。
習さんが怒ると◯◯がダメになる
さて、この◯◯に何が入るか。そもそも、習近平さんが怒るとはどういうことか。中国の国内景気はあまり良くない。そんな状況を放置すると、国を導くリーダーとしての資質を問われかねない。にもかかわらず、中国の人たちは盛んに日本に出かけては「爆買い」とやらに熱を上げている。これでよいのか。
と習近平さんが腹を立てたのかどうかは定かではない。けれども、2016年4月8日、中国政府は海外で購入した商品を国内に持ち込む際にかかる関税を引き上げた。その結果、何が起こったのか。
「爆買い」が止まったのである。これがマーケティングの因数分解パート2「ペスト(PEST)に注意」のP、つまりPolitics=政治的要因である。ビジネスを行う上で、必ず注意しなければならない変化は、法改正だ。確かに中国国内の法改正が「爆買い」に影響することは読めなかったかもしれない。けれども、少なくとも関税引き上げが公表された時点で「爆買い」への影響は予想されたはずだ。ダメになったのは「爆買い」期待で店舗を増やした量販店を筆頭に、「爆買い」頼りになってしまった小売店である。
これが国内の法改正なら、もっと早く読める、というかそもそも公表されている。飲酒の取締が厳しくなりどうなったか、駐禁の取締が厳しくなった結果どんな影響が出たか。影響を受けた業種があり、ビジネスチャンスを見出した業種もある。
10年ほど前の話になるが、厚労省がメタボ対策に本腰を入れて取り組む動きを知り、時間をかけて開発されたのが、ヘルシア緑茶である。メタボ対策は厚労省の審議会などで検討された。その審議会の内容はホームページで公表されている。これを見ていれば、どんなビジネスチャンスが、いつぐらいに生まれるのかを予測可能。だからヘルシアは誕生した。ペスト(PEST)のPは、ある程度先読みができるのだ。
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2015.07.10
2015.07.24