マーケティングというと、3CだとかPEST、5FにVCにSWOTだSTPだ4Pなどなど、さまざまな特殊用語が出てくる。これらの用語は決して言葉遊びの道具ではない。使い方を理解した上で使いこなせば、マーケティングを考えるための強力なツールになる。そこで前回の3Cに続いて、今回はペストすなわちPEST分析について紹介する。
為替と株の値動きは?
NHKのニュースではないが、為替と株の値動きを注視しておくのは経営者の義務と言っていい。ペスト(PEST)のEは、Economicalすなわち経済動向である。というと短期的な話と思いがちだが、決してそれだけではない。
企業とは「Going Concern」である。企業活動には永続性が求められる。だから長期的な視点、つまりこれから起こることを予測し、それに備える必要がある。短期的な視点はもちろんだが、3年先5年先さらには10年先を読むことも欠かせない。
その意味では、国内だけでビジネスを続けていてよいのかという問いは、常に頭の中に置いておくべきだろう。アベノミクスをいくらぶち上げても、国内景気が上向かないのは当たり前の話。日本国内だけでは、需要が伸びないのだ。その意味で経営上の最大のリスクは、膨らみきった国債の行方かもしれない。
既に金融資産の海外持ち出しに制限がかかってきている。こうした動きは今後、厳しくなることはあっても、緩和される可能性はまずない。事業のリスク分散をどうすべきかは、今から考えておく必要のある課題だ。
賢かった代ゼミ
代々木ゼミナールが、予備校事業を縮小・撤退している。18歳人口の継続的減少が、今後も見込まれるのだから、予備校業界での生き残りが厳しくなるのは当然のこと。特に、国公立トップ校合格を目指す駿台や河合塾に比べて、代ゼミは私立を対象としていたから厳しさもひとしおだ。
私立大学は既に全入に近い状況である。早稲田でさえ、試験を受けて入ってくる学生は半分以下だと聞いたことがある。要するに系列高校から入ってくる学生が多いわけだ。今どき、私立大学合格のために、わざわざ予備校に通う現役高校生がどれだけいるか。ましてや浪人してまで私立大学を狙う層は激減している。事業縮小は賢明である。さらに代ゼミが賢かったのは、事業縮小後の展開まで考えていたことだろう。
京都駅前に「ホテルカンラ京都」がある。ミシュランガイド京都・大阪版に5年連続で選ばれるほどの、知る人ぞ知るホテルである。この前身は、京都駅前にあった代ゼミ。代ゼミは18歳人口縮小を読み、予備校事業の次を考え、駅前の好立地を活かすことを考えていたのだろう。
18歳人口の減少を先読みし、将来戦略を立てた好事例としては、以前金沢工業大学を紹介した。同校は北陸新幹線ができて、受験生の首都圏流れが懸念されたが、そんな影響がまったくないほど人気を集めている。
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2015.07.10
2015.07.24