日本のビジネスマンであれば、市場規模の大きな海外でも勝負をしたいと考えている方は多いのではないでしょうか。 今回は、国際取引に伴って、外国の公務員との関係を持つことになった場合に注意しなければならない点について、簡単にご説明していきます。
数年前、丸紅株式会社がインドネシアでの発電所建設契約を獲得するためにインドネシアの公務員に賄賂を支払う行為に加担したとして、連邦裁判所から約91億円というアメリカンサイズの罰金を科せられたことは記憶に新しいのではないでしょうか。この事件は、まさにFCPA違反で米国において日本企業が訴追されてしまった事例です。
このように、日本企業による外国公務員等に対する贈賄行為であっても、日本法ではなく米国法で処罰されてしまう場合があることから、海外にてビジネスを行う日本企業は、国内法のみならず、米国法をはじめとする海外の法律にも十分に注意を払っておかなければなりません。
連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)の問題点
ところで、米国の国内法にすぎないFCPAが、あたかも国際法であるかのように海外企業にまで適用されるという点には疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この点、米国がFCPAを域外適用する理由は、米国だけが外国公務員等に対する贈賄規制を厳格化するのであれば、米国の企業は他国の企業に比べて海外ビジネスにおける競争上明らかにハンデを背負うことになるため、これを防止することにあると考えられます。
確かに、米国が外国企業による外国公務員等に対する贈賄行為を米国企業と同様に一律かつ公平に罪に問うのであれば、国際競争がより公正なものとなることが期待できます。しかし、必ずしも米国がFCPAを各国の企業に対して一律かつ公平に適用する保証は一切なく、国際情勢などによって米国が恣意的にFCPAを運用してしまう恐れは十分にあります。また、米国司法省はFCPA違反の企業に莫大な制裁金を科すところ、これを米国政府が取得するという点にも疑問は残ります。
国際競争の公正さを担保する必要性があることは確かですが、その手段の公正さも担保しなければなりません。
したがって、全世界的に国際競争の公正さを目指していく現在の潮流に鑑みれば、米国の国内法にすぎないFCPAをあたかも国際法であるかのように域外適用して対処するのではなく、今後は、海外における腐敗行為を取り締まることを目的とした国際機関を設立するなどの方法を検討していくべきであると考えます。
最後に
今回は、外国公務員等に対する贈賄行為を規制する法律として、国内法である不正競争防止法上の外国公務員等贈賄罪と、米国法である連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)について簡単にご説明いたしました。
この拙筆が、ビジネスにおいて外国公務員等と接する機会のある方々にとっての注意喚起となれば幸いです。
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2017.03.08
2009.02.10
シティクロス総合法律事務所 弁護士
東京都港区で弁護士をしている山室と申します。 経営者にとって、いつでも気軽に相談ができるビジネスパートナーのような存在になることを心掛けながら、日々の業務を行っています。