日本のビジネスマンであれば、市場規模の大きな海外でも勝負をしたいと考えている方は多いのではないでしょうか。 今回は、国際取引に伴って、外国の公務員との関係を持つことになった場合に注意しなければならない点について、簡単にご説明していきます。
そして、汚職や政治腐敗の防止を目指す国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」が昨年まとめた報告書では、日本は外国公務員贈賄防止条約による取り決めを「ほとんどあるいはまったく実施していない」とまで評価されてしまっているのです。
このような状況を受けて、つい先日、OECDの贈賄作業部会の代表団が来日し、日本政府に対して腐敗防止のための取り組みを強化するよう求めました。このとき、ドラゴ・コス議長は、日本は外国公務員等に対する贈賄を規制する法制度に重大な欠陥があると指摘したうえで、今回の来日は日本政府に行動を促す最後の手段であるとまで述べたようです。
OECDから上記のようなお叱りを受けてしまった以上、今後、日本政府としては外国公務員等贈賄罪をこれまでよりも積極的に適用せざるを得ません。
以上のような背景もあって、今後は外国公務員等贈賄罪による摘発件数が増加していくことが予測されます。
そのため、現場の暴走によって外国公務員等に対する贈賄が行われてしまい、外国公務員等贈賄罪によって会社が刑事責任を問われてしまうといった事態を避けるために、国際商取引を行う企業においては自社のコンプランス体制をもう一度見直すことが必要です。
連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)による規制
実は、日本企業が外国公務員等に対して利益供与をした場合、国内法である外国公務員等贈賄罪のみならず、米国の法律によって裁かれてしまう可能性もあります。
その法律とは、外国公務員等贈賄罪と同様に、外国公務員等に対する利益の供与を禁止する連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)です。
ところで、刑罰法規というものは、一般的には、自国の領域内で行われた自国又は他国の企業・個人による行為を対象とし、あるいは、自国の企業・個人が海外で行った行為を対象とするものです。そのため、例えば日本企業がインドネシアの外国公務員等に対して贈賄行為を行ったとしても、米国法によって処罰されることは通常はありません。
しかし、FCPAは、米国内で行われた行為という点を極めて広く解したり、教唆・幇助・共謀といった理論を使ったりすることによって、世界中の企業が包括的に適用の対象となり得るような域外適用の仕組みを構築しています。そのため、仮に米国とはほとんど無関係に外国公務員等に対する贈賄行為が行われたような場合であっても、FCPAの適用対象となってしまう可能性があるのです。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2017.03.08
2009.02.10
シティクロス総合法律事務所 弁護士
東京都港区で弁護士をしている山室と申します。 経営者にとって、いつでも気軽に相談ができるビジネスパートナーのような存在になることを心掛けながら、日々の業務を行っています。