日本のビジネスマンであれば、市場規模の大きな海外でも勝負をしたいと考えている方は多いのではないでしょうか。 今回は、国際取引に伴って、外国の公務員との関係を持つことになった場合に注意しなければならない点について、簡単にご説明していきます。
外国公務員等贈賄罪に該当する行為について
では、どのような場合に外国公務員等贈賄罪が成立してしまうのでしょうか。
まず、贈賄の相手である「外国公務員等」とは、外国公務員のみならず、政府関係機関や外国政府が出資した公的企業など、広い範囲の個人・団体が対象となっています(同法18条2項)。
また、「金銭その他の利益」には、カネや物品のみならず、食事、ゴルフなどの接待行為、現地法人における役員のポストのような職務上の地位も含まれます。賄賂というと、ドラマで見るように“菓子の下に札束をびっしりと敷いた菓子箱を政治家にスッと渡す”といったものを想像してしまいますが、あらゆる不正な利益が含まれてしまいますので注意が必要です。
さらに、外国公務員等贈賄罪によって処罰をされないために、現地法人やコンサルタントを使って贈賄行為をさせた場合であったとしても罪を免れることはできません。背後で糸を引いていたのであれば、外国公務員等贈賄罪の共犯として処罰の対象となってしまうからです。
なお、いかなる行為が外国公務員等贈賄罪に該当するかについては個別の事情に応じた法的判断が必要となりますので、その都度、弁護士に相談なされることをお勧めします。
外国公務員等贈賄罪による摘発事例
さて、以上のような外国公務員等贈賄罪ですが、国内ではどのような事例によって適用されているのでしょうか。
外国公務員等贈賄罪によって初めて起訴された事件は、電気工事大手である株式会社九電工の子会社の従業員がフィリピン政府高官に80万円相当のゴルフクラブセットを提供したという事件です。九電工事件では、会社は起訴されることなく、社員2名に罰金刑(20万円、50万円)の有罪判決が下されました。
また、最近の事件としては、鉄道コンサルタントである日本交通技術株式会社がODA事業を受注した見返りとしてベトナム鉄道総公社幹部に対して総額約6990万円リベートを支払ったという事件です。日本交通技術事件では、役員ら3名には執行猶予付の懲役刑が下されたほか、会社に対しては9000万円という高額の罰金刑が下されました。
外国公務員等贈賄罪による摘発件数と今後の予測
では、上記2件のように外国公務員等贈賄罪によって起訴された事件は、1999年の同法施行以来、何件あったのでしょうか。
答えは上記2件を含めて4件のみです。
この件数は日本経済の規模の大きさから考えると不自然な数字であり、日本の捜査機関が外国公務員等に対する贈賄を積極的に取り締まっていないことを表しています。
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2017.03.08
2009.02.10
シティクロス総合法律事務所 弁護士
東京都港区で弁護士をしている山室と申します。 経営者にとって、いつでも気軽に相談ができるビジネスパートナーのような存在になることを心掛けながら、日々の業務を行っています。