調達購買改革を巡る誤解 その2

2016.09.07

経営・マネジメント

調達購買改革を巡る誤解 その2

野町 直弘
調達購買コンサルタント

お客さんなどから良く聞かれる質問で「サプライヤ評価をやろうと検討しているが、どのような評価項目にすればよいですか?」ということがあります。しかしそういう企業に限って何のためにサプライヤ評価をやろうとしているか明確でないことがとても多いです。サプライヤ評価はあくまでも手段であり目的ではありません。それではサプライヤマネジメントはどのように進めていけばよいでしょうか。

このようにサプライヤ評価はあくまでもツールであり、それを元にサプライヤ戦略を策定し、戦略に基づいて各施策に落とし込んでいくことがサプライヤマネジメントの全体像なのです。

これは品目群毎に考えていく必要があります。よくサプライヤ格付けということで評価が高いサプライヤから1軍、2軍、3軍、のように区分けをすることがありますが、このような総花的な格付け自体にはあまり意味がありません。サプライヤ戦略は品目群毎に策定するのですから、評価や戦略、戦略に基づきどのような差別化や施策を行うか、は品目群毎に変わってくるからです。

このようにサプライヤ評価を捉えるとどのような評価をすべきかは目的によって変わってくることが理解できます。例えばある企業のサプライヤ評価軸の事例ですが、品質(Q)に関する評価がありません。何故ならこの企業は品質が悪い企業とはそもそも取引をしていないので、現在取引をしているサプライヤの実績評価に品質評価を入れる必要がないからです。何を目的としてどのような企業を対象にした評価であるかにより評価項目は変わってくるのです。

昨年の4月まで約3年程「改革推進者勉強会」という会を私が発起人になって進めてきましたが、その会の1つのグループにサプライヤマネジメントグループがありました。
この勉強会で何社かのサプライヤマネジメントの事例を調べる機会がありました。

各企業ともとても興味深い事例です。ある1社は限定されたサプライヤのみの評価を行っています。全体で300社以上の取引サプライヤがいるものの評価対象は30社程度。つまり評価対象となっているサプライヤはバイヤー企業側が関係性を強めたいサプライヤです。取引金額が大きい、とか1社しか対応できない技術を持っている、などのサプライヤをあえて評価対象とすることでそれらのサプライヤと緊密な関係を築こうとしている訳です。この企業のもう一つの興味深い点は購買部門はサプライヤの評価を改善することが仕事であり、KPIとして管理しているという点。通常、評価はやるけど、評価の改善についてはサプライヤ任せ、という企業が多いわけですが、この企業はサプライヤ評価の改善を購買部門が会社に対して責任を持っているのです。

別のある企業はとてもシステマチックなサプライヤマネジメントの仕組みを持っていました。サプライヤ評価のための専任チームを持っており、そこが四半期の評価や評価項目のメンテナンスなどをしています。またサプライヤと自社のマネジメントのクォタリミーティングを実施したり、トップダウンでサプライヤマネジメントをシステマチックに推進しているのです。この企業はサプライヤマネジメント=購買業務と捉えているのです。多くの企業では競合見積をとったり、コスト削減交渉をしたり、それが調達購買業務と捉えていますが、この企業は選ばれたサプライヤと取引をしているのだから競合見積をとる必要すらないという考え方なんでしょう。つまりサプライヤ評価やサプライヤマネジメントが調達購買業務そのものであると捉えているのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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