異業種格闘技がもたらす将来

画像: acworksさん

2016.06.03

経営・マネジメント

異業種格闘技がもたらす将来

野町 直弘
調達購買コンサルタント

2009年に出版された「異業種競争戦略」に書かれている異業種格闘技は近年ますますその傾向が強くなっています。米ウーバー・テクノロジー社とトヨタ自動車の提携は将来のシェアリングモデル進化の時点での自動車市場の構造変化を睨み将来の異業種格闘技に備えるという意味を持っているでしょう。その意味や異業種格闘技がもたらす将来像について述べています。

具体的にはADAS(先進運転支援システム)や自動運転が進展すると、自動車はモータリゼーションではなく、単なるトランスポーテーションの一手段と捉えられ始め、将来的には自動車のシェアリングは一気に進展すると予測されます。そうなるとウーバーのようなシェアリングモデルはタクシーやハイヤーの代替としてではなく自家用車の代替になっていくでしょう。結果的には社会全体で車の稼働率が上がることになり、車の総需要台数は激減する(必要なくなる)方向です。今回の提携はこのような自動車市場の構造変化を考えた上でのものではないか、という見方なのでしょう。

私は日本のマーケットではこのようなシェアリングのニーズは乗用よりも貨物用途の方が高いと考えます。実際に米国ではinstacartという買い物代行事業者やアマゾンのFlexというサービスなど貨物版ウーバーのサービスモデルが生まれ始めているようです。

4月14日の夜に熊本地震が始まりましたが、同日にトヨタとホンダが通れる道の地図情報(トヨタ「通れた道マップ」ホンダ「道路通行実績情報」)を公開しました。これは両社が通信機能を持つカーナビからの情報を元に作成公開したものです。このような情報サービスが非常に短時間に取得・加工・公開できるということは驚くべきことです。

このような乗用車の通行情報だけでなく、貨物運搬可否情報や運行予定情報などが取得できれば物流は爆発的に効率化されるでしょう。物流は実働率と実車率を掛け合わせるとモノを実際に運搬している比率になりますが、営業用車でもこの数値は50%程度です。
つまり半分は車庫に眠っていたり、荷物を積まないで走ったりしています。この数値からも運行情報とシェアリングモデルにより物流が大幅に効率化される余地は残っているのです。

現在、物流の大きな問題とされるラストマイルの問題ですが、このような情報活用とシェアリングモデルで解決される可能性は高いと考えられます。ADASや自動運転化は事故のリスクを低減し、従来なら、プロでないと運べない、もしくはプロ以外の人に運転してもらいたくない、といった制約が限りなく低くなるでしょう。これは一層シェアリングモデルの活用を進展させる要因になります。

将来をイメージするとこういう感じでしょう。自動運転カーをレンタルしカーナビに行き先をインプットすると貨物情報や乗り合い情報(ニーズ)が提示される。そこでついでに荷物を運ぶとレンタル費用が割引になる。これを個人がやったり自動運転カーを保有する事業者がやったりする時代になるのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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