先日、 「ひらめき」と「直感」の違い についてご紹介しました。 「直感」は、脳科学的に言えば、 大脳皮質の前頭葉のすぐ内側にある「ストリアツム」(線条体) の働きによって、潜在記憶の中から導き出された 「答え」 であり、なぜその答えが正解かを言葉でうまく説明できません。
すなわち、「分析的・論理的」な計算によって得られた答え
(この場合、正解の理由を明快に説明可能)ではなく、
「総合的・全体的」な視点での推論が「直感」だと言えます。
さて、「直観」を研究している伊藤毅志氏
(電気通信大学助教)によれば、
将棋のプロ棋士を対象に、アイカメラを使った実験を
行った結果から、次のようなことを述べています。
(日経産業新聞、2007/12/13)
“プロ棋士は何も考えていないようにみえるが、
いかに読まないか直観を磨いているのではないか”
*伊藤氏は、「直観」という言葉を使われていますが、
「直感」と語義は同じと考えていいようです。
伊藤氏がこのように考える理由は、
羽生善治氏クラスの一流棋士になると、
次の一手を一瞬のうちに絞込み、せいぜい
2、3手
しか次の手の選択肢を思い浮かべないからです。
もちろんその後に、
何十手か先までの局面展開を「読み」ますが、
それは直観で思いついた手を確認するための作業に
すぎません。
しかも、読む総量はせいぜい数十局面だそうです。
コンピュータを駆使する将棋ソフトでは、
膨大な局面展開(数百万から数千万!)を
分析的・論理的に読んだ結果に基づいて次の一手を決めます。
しかし、生身の人の場合、特に一流であればあるほど、
論理的な思考ではなく、全体的な直観的思考で判断を
行っているというわけです。
将棋の場合、チェスなどよりもルールが複雑で、
展開が複雑過ぎるため、コンピュータでも完璧に
読みきれないとは言え、今のところ、ある意味大雑把な
判断に見える「直感」に頼る方が強いということには驚きです。
これまで、自分のヒットはすべて「説明できる」と
豪語してきたイチローが、これからは「見えない世界」
(=説明できない世界)をコントロールする必要性を
悟ったことを先日の記事に書きましたが、将棋の世界に
かかわらず、どの分野でも行き着く先は、つまり究極の
勝負は、「直感力」が決め手になるのでしょうね。
ところで、どうやったら
優れた直感を発揮できるのでしょうか。
基本的には、かのブルース・リーが、
「燃えよドラゴン」の冒頭のシーンで言ったように、
「Don't Think. Feel!」(考えるな、感じろ)
という姿勢が直感を働かせるために必要です。
ブルース・リーは上記の言葉に続いて、
「それは、月を指差すようなものだ。
(月を指している)指に集中するな。
さもなくば、その先にある月(=全体性)を
見失ってしまう」
次のページ感じることは、物事を全体として観ることである
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2008.08.12
2012.07.13
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。