今年の正月もまた、福袋を求めて行列ができた。多いところでは2万人もの人が並んだという。お客様からは大人気の福袋だが、百貨店はこれをどうマーケティングに活用しているのだろうか。
狙いは富裕層である。たとえば高島屋横浜店の目玉は、その名も「プレ
ミアムパック・セレブプラン」2008万円の福袋だった。これには日産の
スポーツカー・GT-Rと高級腕時計「ピアジェ」、さらに指輪がセットさ
れていたという(MSN産経ニュース2008.1.2→ http://sankei.jp.msn.com/photos/economy/business/080102/biz0801021822001-p1.htm)。
こんな福袋をポンと買えるのは誰か。
富裕層しかいない。
もちろん、このスーパー福袋の狙いの一つには話題作りがある。しかし
これをやっていたのが高島屋となると単なる話題作りだけとは思えな
い。なぜなら同社は以前、名古屋地区で実に巧妙な福袋マーケティング
を展開しているからだ。
ここで一つお断りしておく。以下の内容は、以前確かに日経MJ新聞(当
時はまだ日経流通新聞と呼んでいた時代かもしれない)で読んだ記事を
元にしている。が、それがいつの日付だったかまでは定かに覚えていな
い。なのでいささかうろ覚えの部分があるかもしれない。
さて、高島屋が名古屋地区で採ったのが、見事な福袋マーケティング作
戦だった。ジェイアール名古屋高島屋がオープンしたのが2000年のこ
と、名古屋の百貨店業界では最後発である。同社がもっとも狙いたい顧
客層はいうまでもなく富裕層。だが、この層はすでに他店の外商部門が
がっちりと抑えている。そこで最大の課題となったのが、どうやって富
裕層と接触するか、だった。
この課題を解消するツールとして高島屋は福袋を使った。
今年の2008万円福袋とまではいかないが、確か300万円ぐらいの高額福
袋である。そして、売値は300万だが中身は1000万円相当ぐらいのお宝
が入っていることをアピールした。この作戦の目的はおそらく次の2点
だったはずだ。まずは名古屋では新参者なので、とにかく何か目立つこ
とをして注目を集めること。打ち上げ花火として中身1000万円の福袋は
十分なPR効果を望める。
そしてもう一点、こちらの方が実は本命なのだが、それは名古屋地区の
富裕層をリスト化することだ。要するに300万円の福袋(1000万相当の
ものが手に入る)と求めてくる客を潜在顧客としてリストアップする。
富裕層といえばセレブな方々である、そんな高貴な人たちが福袋などに
群がるような振る舞いをするだろうか、と考えるのは、お金持ちの本質
を知らない人の思考。本当のお金持ちとは極めて利にさとい人たちのこ
とを指す。お金があるからといって無駄遣いをすることは決してなく
(お金持ちほど実はケチである)、かといって支払う対価以上の価値を
得られると思えば、我々がびっくりするような買い物を平気でする(そ
の結果、支払った対価以上の価値を確実に手に入れることができ、それ
がさらなる価値を手に入れる元手と化していくわけで、これがお金持ち
の自己増殖循環ロジックである)。
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