2015.11.23
職場のウェルビーイングを考える (2) - 「今、できること」に焦点を当てる
おおばやし あや
SAI social change and inclusion 代表
職場でのうつ病や心の問題は決して無視できない問題です。しかし、メンタルケアそのものに取り組むよりも、組織として人を活かす「ウェルビーイング(より良く生きる)」の実現に恒常的に取り組むことのほうが、あらゆる意味でメリットがあると筆者は考えます。今回はGDPに代わる豊かさの指標として注目されつつあるwell-beingについて、もう少し詳しく解説してゆきます。
日本には、素晴らしい会社がたくさんあります。私自身とても誇らしいことなのですが、どこの国に行っても、本当にたくさんの海外の方が、日本を好きだと熱っぽく語ってくれる場に何度も遭遇してきました。日本の食、文化、サービスや製品を讃え、時に絶対の信頼を置いています。それは、歴史へのリスペクトもあるでしょうが、今の日本の会社と、そこで働いている人々が、日々良い仕事をしてくださっているからです。
上記のフィンランドの国体のように教育と組織で例えるならば、「より多くの自国民に、一定以上の学力を与える社会システム」として、日本はおそらく世界最高位です。1億を超える人が、音訓を持つ2000文字以上の漢字という難しいものを使いこなし、義務教育の中で世界でも高水準の学力レベルを習得している。社会でも同様に、グループの平均値を構造的な力で高度まで押し上げる、という非常に高いシステム力はありますが、しかし、学校でも組織でも、そのシステムから抜け落ちた、いわゆる「落ちこぼれ」「はみだしもの」「変わりもの」には決してやさしくありません。というよりも、システム自体が堅固なあまり、はみだしものと言われる人を作っていまっていることに、多くの人は気づいているのではないでしょうか。そしてもし、この国が、社会が、個人というものにもう少し優しくて、もう少し我々の多様性を認めてくれればと。
今後、少子化が進む日本の教育も、個性を発揮したり、生きる力を高めるためにより主体的に学ぶ方向へと改定されてゆくと聞きました。
…けれど未だ大人の世界では、システムからはみださないよう、自分の個性や意志を抑圧しながら組織に尽くすことが「当たり前」であり、結果ストレスを抱え、心を病んでしまっている人もたくさんいる。この状況を変えずに、次の世代へバトンタッチをしていいのだろうか。
今、目の前で苦しんでいる仲間がいる。笑顔を見せない人がいる。うつ病を発症していないにしろ、日々抑圧を感じる。実際、生産性や仕事の精度も下がり、離職率が上がっていく。…
うつ病などが「甘え」かどうかという議論は、状況改善において完全に無意味です。なんであれ、現象が起きている以上、今現在、問題は進行しているのですから。
人の強みや「できること」に着目し、エンパワーメントを与え、人としての失敗やつまづきを折り込む寛容さも持つ。もし問題が発生したら、今の現状を正確に見つめ、目標を立て、「できること」を把握し、現実的に改善を目指す。
メンタルケアを必要とする人がいてもいなくても、この基本の立ち位置は変わらない。シンプルには、それができるのが、ウェルビーイングの意識を持ち、人を活かし社会意識のある、結果的には繁栄の道をゆく骨太の組織ではないだろうかと思います。そして、「組織のありかたを変えてゆく」のがこの目的のための手法です。
会社のすべきこと
では具体的に、社員のウェルビーイングを目指すものとして会社はどうすればいいのでしょうか。私の考えるキーワードは以下です。
- 現状把握
- 対話
- 自己表現
- 労働者の権利
- 目標設定
次回は、ここに挙げたキーワードをメインに、「甘やかしではない」実行策、対話の必要性や、様々なアイデアを提案させて頂けたらと思います。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
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おおばやし あや
SAI social change and inclusion 代表
Well-beingの実現をめざす起業家として、日本、フィンランドで主に労働者福祉分野で講師や研究開発者として活動。フィンランド国家認定ソーシャルワーカー。 「個と全を活かす」をテーマに、コミュニケーションツール開発や、多くの関連ワークショップ、研修を全国のさまざまな大学、企業、団体さまにて提供させて頂いています。