東京オリンピック招致委員会が注意を受けた、という記事を読んで、つらつら思ったこと。
1月10日更新の、国語力検定ホームページ(http://www.zkai.co.jp/kentei/)連載コラム「言葉にまつわるあれこれ」で、以下のように書いた。
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こんなニュースがあった(asahi.com2008年01月07日11時45分より)。
《2016年夏季五輪招致を目指す東京オリンピック招致委員会(会長・石原慎太郎都知事)が、立候補都市が守る行動規範に反した疑いがあるとして、国際オリンピック委員会(IOC)から文書注意を受けていたことが分かった。招致委は「厳粛に受け止めて対処する」としている。》
へえ、何をやらかしたんだ?と思って読み進めてみると、こうある。
《招致委によると、在ブラジルの日本在外公館関係者が昨年12月、16年五輪に立候補しているリオデジャネイロ招致委員会のヌズマン会長を表敬訪問した際、「ブラジルが14年サッカーワールドカップ開催地に選ばれたのに、なぜ立候補するのか」と尋ねた。この発言が「立候補都市は他都市を尊重する」と定めた行動規範に反すると、リオの招致委がIOCに報告した。》
五輪立候補都市である東京の人の、「ブラジルが14年サッカーワールドカップ開催地に選ばれたのに、なぜ立候補するのか」という発言が、同じく五輪立候補都市であるリオを尊重していない、ということのようだ。
よくある、疑問か反語か、という問題である。
ちょっと何種類か、言い換えを作ってみよう。
「14年サッカーワールドカップ開催地に選ばれたこと、おめでとうございます。ところで、どうして16年五輪に立候補されるんですか?」
これだと、あんまりトゲはないかな。純粋な疑問と解される余地はある。
「14年サッカーワールドカップ開催地に選ばれましたよね。そのうえ、どうして16年五輪に立候補されるんですか?」
これは、かなりトゲがありますよね。反語と解されてもしょうがない。
「14年サッカーワールドカップ開催地ですよね。そのうえ、16年五輪に立候補するなんて、何を考えの所業ですかそれは」
ここまで来ると、もはや詰問・恫喝に近い。
表敬訪問の場で、よもや恫喝めいた言葉を口にしたとは考えられないが、言い方一つで、疑問にも反語にも詰問にも恫喝にもなる。
さらに難しいのは、その解釈が、受け手に任されていること。
単純な疑問のつもりで聞いたのに、詰問と解釈されてしまった、なんてことは、みなさんにも経験があると思います。
とりわけ組織内において、上の立場の人が下の立場の人に疑問をぶつけた場合に、そういうことが多いのではないでしょうか。「おいおい、責めてるわけじゃないんだからさ……」的なシチュエーション。
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