外食チェーン大手のワタミは、2015年4~6月期の連結決算を発表しました。発表された連結決算を見ると赤字幅が拡大し、大変厳しい結果となっています。このような状況のもとで、ワタミの復活は本当に可能なのでしょうか?
ワタミの経営理念には、顧客満足(CS)の最大化の実現を目的とすることが定められており、その点においては、他企業のものと大きな差異はありません。しかし、CSを理念として掲げている他企業と決定的に異なる点は、ワタミの場合、他社と比較して顧客に提供するサービスの中核を為す料理やメニューなどの品質向上・改善に関する「拘り」がやや弱い、と見受けられる点にあります。
CSを追求している企業に共通する点として、商品やサービスの質に「強い拘り」をもっていることが挙げられます。例えばユニクロを展開するファーストリテイリングは、高品質の商品や素材の開発に、極めて熱心な企業として知られていますし、スターバックスコーヒーも、珈琲やフードの「味」の維持・向上のために、大変な経営努力を重ねています。このように、CSを重視している企業ならばどこでも、自社製品やサービスの品質の向上や改善に「強い拘り」を持っています。
それに比べワタミの場合、「CSを重視した理念」を他社以上に強く訴求している割には、「料理の味覚向上」などの提供サービスの本質に関わる部分に、他社ほどの「強い拘り」が見えてきません。そのせいか、「ワタミ、料理」といったワードで検索を行うと、ワタミを利用したことのある顧客のネガティブなコメントが多数散見されます。理念に基づき、本気で「美味しい料理」の提供などに注力してきたのであれば、これほど多くのネガティブなコメントが散見されることはないだろう、と思います。
このことからワタミでは、理念を「料理の品質向上」といった顧客満足の向上に直結する領域で活用することはせず、従業員のマネジメント領域に限定して活用していたのだろうと考えられます。その結果、顧客満足度を向上させるために有効となる施策の実施がおろそかになり、客離れの加速化に繋がったのだろうと推察されます。
■従業員満足(ES)軽視の経営姿勢
ワタミの経営のもう一つの特徴として、「従業員満足(ES)の軽視」が挙げられます。
CSを重視する企業では、従業員に自社の理念や提供するサービスの品質を理解してもらった上で、自信をもって顧客に自社のサービスを推奨してもらうために、定期的に従業員満足度を測定する「ES調査」を行うケースが増えています。自社の従業員の支持も得られないサービスを顧客に支持してもらうことが、極めて難しくなっている現状があるからです。
2年ほど前のことですが、2013年に、渡邊氏が理事長を務める郁文館夢学園に関する記事が、雑誌に掲載されました。
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2009.02.10
2015.01.26
川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション 代表取締役
経営コンサルタントの川崎隆夫です。私は約30年にわたり、上場企業から中小・ベンチャー企業まで、100社を超える企業の広告・マーケティング関連の企画立案、実行支援や、新規事業、経営革新等に関する戦略計画の立案、企業研修プログラムの策定や指導などに携わってきました。その経験を活かし、表面的な説明に留まらず、物事の背景にある真実が浮かび上がってくるような、実のある記事を執筆していきたいと思います。