「プロジェクトを失敗させない秘訣は目標を設定しないこと」という笑えない冗談もありますが、企業研修においてもそれは同様です。意識してか無意識にか、あえて曖昧な目標を設定し、後追いで都合のよい評価を行うことで、結果的に高い評価の研修をつくることもできます。 本稿では、研修の企画担当者としてあるべき評価について考えていきます。
大まかにはカークパトリックは4段階までを提唱し、ジャック・フィリップスはほぼ同様の4段階に5つめを加えました。
隠れた目標に留意が必要
研修の目的を検討する段でも触れましたが、関係者の評価を得るには、その期待を適切に把握する必要があります。
研修の目標といえば、前述の学習成果がイメージしやすいですが、実は施策全体の中での研修の役割として、今後の施策に貢献する何かを期待されている可能性もあります。
具体的な例としては、従業員の意識調査や認知度調査、社内研修を外販するための標準化等が考えられます。
後述する評価も当然この隠れた目標もふまえたものになりますので、検討にあたってはやはり上司はもちろん、関連部署や現場との認識合わせが必要です。
なお、担当者の処世術ではありませんが、関係者が多すぎて期待もさまざまである場合は、上司へ相談をふまえて「○○は今回の目標に含めない」と明示することも効果的です。後日に隠れた目標が再燃するリスクを避けられますし、含めるもの/含めないものを明記することで、さらなる隠れた目標の出現も抑えやすくなります。
比較対象としての評価基準
同じ研修の結果を見て、ある人は成功と捉え、ある人は失敗と捉える原因は、その結果を比較する対象が異なるからです。
たとえば、修了率が90%であった研修をどのように評価すればよいでしょうか。自分の感覚では90%は快挙だと思っても、昨年度比では下がっている可能性があります。一方、他の研修よりは高い修了率といえるかもしれませんが、そもそも修了率では何ともいえない等の意見が出るかもしれません。
主観も含めた比較対象がさまざまだと、評価もさまざまになることをお分かりいただけるでしょうか。
このように評価にばらつきを生まないためには、研修終了後ではなく、企画時に目標とセットで、評価方法と評価基準についても合意しておく必要があります。そして、その基準と結果の比較によって評価することで、人によって評価が異なる課題は解消されます。さらに、研修内容も冗長さを排除し、目標達成に対してより適正化されるという効果も得られます。
なお、実務においては、評価手法や評価基準を検討する中で、研修目標を再検討することになる場合もあります。その際は、研修の成功に必要なプロセスであると認識し、目的・目標・評価基準を行き来しながら整合性をとっていくことが重要です。
何のために、何を評価するのか
これまで、目的や目標から導き出した評価基準と評価方法について、その全体像と社内での合意を得ることの重要性、カークパトリックらの提唱する評価方法をご紹介しました。それでは、そもそも評価とは何のために、何を評価するのでしょうか。
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学ぶ力の育み方
2015.07.01
2015.08.31
株式会社エデュテイメントプラネット 代表取締役
社内教育担当者・教育事業者・学校法人を対象に、研修(授業)企画・教材開発サービスを行う。 特に、繰り返し実施する研修で、講師の品質に大きく左右されず、常に一定品質以上の教育効果を生むことをめざした研修の企画・開発を行っている。 開発した教材のテーマやメディアは多岐に渡り、ビジネスゲーム『ロボロボ』は韓国大手製鉄会社でも活用されている。