1823年にドイツの科学者ヨハン・デーベライナーは、白金のかけらに水素を吹き付けると点火することに気がつきました。白金は消耗しないのに、その存在によって、吹き付けた水素と空気中の酸素とを反応させることが出来たのです。
この事実を踏まえると、変革なんてそもそも外から与えられたものに当事者性なんか出せるか、出せたとしてもそれは捏造だ!なんていう変な諦めや誤解から逃れられます。現に、上に挙げた3つに共通することは、元々持っていた天賦の当事者事項のようなものでないとダメというわけでないことが分かります。
たとえば、営業なんて自分には向いていないと感じつつそれでも営業にひたすら打ち込んでいるうちに、「営業というものは・・・」とか「俺の営業は・・・」なんて、まるでもともと自分のことのように話す人をよく見かけます。親から<教えられた>こと、子供の頃習い事を<させられた>ことが、生涯の自分の仕事になっている人も多くいます。親戚や知人から<勧められた>仕事がそのうち自分の天職という感覚になるのも同じでしょう。とにかく、最初は気乗りがしなくても、たとえ嫌なことでも、打ち込んでいるうちに<自分のこと>になるというのが、いわゆる仕事ではないでしょうか?
2番目の点も考えてみましょう。子供が宿題をするときにも親に言われたらやる気が出ないのに、自分でやると言ったら(実際には言わされているのかもしれませんが)、なんとなくやる気が出るなんていうのはその典型です。会社でも目標管理の中で、普段はあまり自分で考えていないようなことでも、上司と話し合いをしていくうちに、自分で目標を口にすると(実際には誘導されて言わされているのかもしれませんが)、その目標に対する乗り気のようなものが出てきて、指示として言われたこととは随分違うでしょう。これは言語の持つ不思議な力とも思えるのですが、自分で口にすると自分のことになるんですね。
3番目の点は、単に期待されるとそれに応えたくなるという単純なことではありません。褒められるとか感謝されるとかよりも、もうちょっと深く期待されること、たとえば、「あなたがやってくれればきっとうまくいく」とか「あなたがいなければ絶対に成功しない」という類の期待です。やろうとしていることに対して、自分が必要とされている、不可欠な存在だと分かると、<自分のこと>になるのです。
間違ってはいけないことは、あなた<も>いると・・・という考え方ではダメです。あなた<が>にならなくてはいけない。なぜなら、<も>の場合は、全体最適つまりチームや組織全体にとって益があるからそれに貢献して欲しいという程度のメッセージになり、たとえあなたにとって部分不最適つまり不都合なことがあっても全体にあなたも貢献できるといったメリットの強調の仕方しかしていないことになります。もっと強烈に、<が>が必要です。そんなことを言ってあげられるほど仕事が出来る人はそもそもそんなにいない。そんなのお世辞に過ぎないからすぐに見透かされてしまうとは考えないでください。まずは、周りが非常に熱くなっているということがその人に分かるようにしましょう。そうすれば、スタート時点で少なくとも、自分が冷めることが自分のとってリスクとなる環境に置かれているという心理になります。その上で、あなた<が>必要というメッセージは、どんな場合でも、お世辞などではなく、本当に真剣なメッセージとして伝わることでしょう。
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変革を科学する
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株式会社インサイト・コンサルティング 取締役
わたしはこれまで人と組織の変革に関わってきました。 そこにはいつも自ら変わる働きかけがあり、 異なる質への変化があり、 挑戦と躍動感と成長実感があります。 自分の心に湧き上がるもの、 それは助け合うことができたという満足感と、 実は自分が成長できたという幸福感です。 人生は、絶え間なく続く変革プロジェクト。 読者の皆様が、人、組織、そして自分の、 チェンジリーダーとして役立つ情報を発信します。