SaaSやクラウドという言葉を頻繁に見かけるようになって久しいですが、その進化は大企業の基幹システムの在り方まで変えようとしています。 ERPのクラウド化はその導入企業や導入ベンダー、コンサルタントにどのようなインパクトを与えるのかを考察します。
これはどういうことかというと、開発に際して自社サーバーを立てる必要がないということもありますが、それよりも、本番環境ランドスケープに影響を与えずに、クラウド上でアプリケーション開発し、それをグローバル展開されている環境にインターネット経由で提供出来るといった、既存環境へのコンフリクトを避けながらスピーディーに開発が可能になります。
グループ会社が個々にサーバーを立てているマルチインスタンスの場合などはとても有効ではないでしょうか。
一方で、既存ERPでの開発とクラウド上の開発が並行する場合は、開発管理/リリース管理が複雑になる可能性もあります。各グループ会社間で機能の重複したり、標準化できずに似たようなアプリケーションが乱立したりしないように、その後の運用も考えた全社横断で最適な開発をコントロールするセントラル組織が必要と考えます。
※ERP運用/導入に関するセントラル組織の重要性については、本シリーズで詳しく書かせていただきます。
インメモリデータベース HANA を専用データベースに
インメモリデータベースとは簡単に言うと、データをディスク上ではなく、メモリ上に載せて処理する技術です。ディスクI/Oが無いため、高速での処理、特にデータの抽出については圧倒的な速度を実現できます。
従来SAP製品ではOracleをはじめとする他社データベースを利用できましたが、S/4 HANAはSAPの製品で初めて HANAを専用データベースとして適用するとしています。
このHANAは2005年に発売されて以来、その画期的なコンセプトから、既に6000社を超える導入実績があり、この2015年7月にビッグデータ処理を見据えたService Pack10が最新版として発表されています。その、HANのコンセプトとは、何よりOLTP とOLAPを同一のプラットフォームで実行するということです。
従来は、その処理能力からトランザクション更新と分析ツールはデータベースを別に保持し、両者間でのデータのやりとりのタイムラグが生じていましたが、それをリアルタイムで実現することが出来るというものです。
もちろん、インメモリデータベースの弱点として、サーバーシャットダウン時のメモリ消失のリスク (揮発性と表現されます)をどのようにヘッジするか、という点はよく考えて導入しなくてはなりません。
(※通常はセーブポイントを設定して、ある時点でのスナップショットを保存しておきます)
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クラウドERPは何をもたらすのか
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