来年1月から希望者を対象に、夜間、学習塾の授業が学校の教室で行われる試みが東京・杉並区立和田中学校で始まろうとしている。斬新なようにも見える今回の試みだが、学校が、学習塾の宣伝の片棒を担ぐだけの結果に終わるような気がしてならない!?
夜の学校で、大手学習塾の授業が受けられる
「夜の学校の教室で、大手進学塾の指導が受けられます――」、
こんな書き出しではじまる記事が12月9日の朝日新聞に掲載さ
れた。新聞記事によれば、東京杉並区立和田中学校で来年1月か
ら、2年生の希望者を対象とした「夜スペ」と題した試みが始ま
ることになったという。
「夜スペ」は月謝を通常の半額程度(月謝は2教科が1万80
00円、3教科だと2万4000円)に抑えて家庭の負担を減ら
しつつ、塾が持つノウハウで、志望校への進学後にも生きる学力
を伸ばすのが狙いだ。
主催するのは、保護者や元PTA、教員志望の学生らが参加
する「地域本部」で、カリキュラムと教材作りには、リクルート
出身の民間人校長として知られる藤原和博校長ら和田中学の先生
も参加する。協力する学習塾は、有名進学校へ数多くの合格者を
出しているSAPIX(サピックス)の中学部だ。
この記事を読んで、まず私が思ったのは、今回の試みは学習塾
にとってみれば、学校を間借りして、その学校の生徒を集めやす
くしているだけのことなのではないか、ということだ。
新聞記事によれば、SAPIX(サピックス)東京本部は、
「採算を取ろうとは思っていない。学校との連携から新しい事業
展開にもつながる」と期待するとあり、採算を度外視した試みで
あることを強調する。しかし、月謝の高さは、普通の学習塾であ
れば、正規の月謝とほとんど変わらない。
なぜ、こんな試みを学校でやろうとするのか私にはわからない。
12月8日の説明会で藤原校長は「学校の授業についていけな
い生徒にはむしろ負担になる。無理に参加しないで」と注意を促
すなど学校の通常授業の補習的な意味合いは少ないと強調してい
る。とれなれば、学校の授業と何の関連もないということなのだ
から、学校が、場所を学習塾に提供する意味は何なのだろう?
学校の付加価値で、学習塾の授業が安く受けられますよ、とい
うことなのだろうか。学校の付加価値を学校自体が創造するので
はなく、学習塾のサービスを安易に使ってそれを行っていこうと
するのであれば、学校や教師の怠慢にならないのだろうか。
学校には学校の領分が、学習塾には学習塾の領分があるはずだ
進学塾のノウハウを活用して、カリキュラムを編成していくの
は良いとは思うが、学習塾が、学校を間借りして学習塾として事
業を行うだけの今回の試みには大きな疑問が残る。
教育の私事性が蔓延した結果、こんな試みがなされてしまうの
だろうが、何でもかんでも新しい試みをすることが良いことなの
ではない。学校には、学校の領分が、学習塾には学習塾の領分が
あるはずだ。学習塾の宣伝の片棒を担ぐような今回の試みは、今
からでも中止したほうが良いと思う。
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2008.01.02
2008.01.02
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。