いくらサービス向上やCS向上に熱心に取り組んでも、サービス提供の価値観次第では、やればやるほどお客様が去っていくということも。そこで今回は、サービス提供の価値観を見つめ直してみたいと思います。
たとえば美容院で髪をカットしたお客様が満足してお帰りになったとします。しかし、その後ばったり会った友人が「ねぇねぇ、前の髪型のほうが良かったよ」と、余計なひと言を。すると、さっきまで満足していたはずの気持ちがあっという間に裏返って、「あんなお店、二度と行かないわ!」と言われてしまう。なぜこんなことになってしまうのでしょうか。それは、サービスが目に見えなくて客観的な評価が難しいからです。つまり、サービスを受けた本人が満足した気になっていても自分の評価に自信が持てないので、他人から違う意見を言われると、あっという間に評価が裏返ってしまうのです。
このように、材料、生産、評価のたった3つの視点で製造業とサービス業を比較しただけでも、お客様に喜んでいただくためには、製造業とは全く違った価値観でサービスを提供しないとお客様には喜んでいただけないことが分かります。
製造業的な価値観で提供されている日本のサービス
サービスでお客様に満足してもらうためには、製造業とは全く違った価値観でサービスを提供する必要があります。しかしながら日本のサービスのほとんどが、製造業的な価値観で提供されているのです。つまり、「良いサービスは喜ばれるに決まっている」と決めつけて、勝手に作ったサービスをお客様に一方的に押し付けていることが非常に多いのです。しかし「勝手に作ったサービス」には、かなりの割合で「余計なお世話」や「無意味行為」「迷惑行為」が入ってしまいます。これでは、お客様に喜んでいただくことはできません。それどころか、やればやるほど、お客様は去って行ってしまいます。
勝手に作ったサービスを一方的にお客様に押し付けている、勝手に考えた提案やキャンペーンを一方的にお客様にぶつけている。こういった価値観から脱却しなければならないのです。
そのために大切なのは、「サービスはお客様と一緒に作るもの」というスタンスです。これをサービスサイエンスでは、「共創型サービス」と呼びます。サービス提供者とお客様が一緒になってサービスを作る。お互いが刺激し合って、サービスを高めていく。サービスを作ったり、磨き上げるプロセスに、お客様も参加していただこうという考え方です。今、元気の良い企業では、こういった価値観での取り組みを熱心に進めることで、お客様からの支持を集めています。
やればやるほど、お客様が喜んでくれて、リピーターが増え、競合との差が開いていく。サービス向上やCS向上をそんな取り組みにするために、「サービスはお客様と一緒に作るもの」という価値観で、これまでの、そしてこれからの取り組みを見つめ直してみてください。
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2015.07.10
2009.02.10
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新