男性社員のそんな「需要」に応えるために、おしゃれするわけじゃない。ルミネの炎上した動画に、わかりあえない社会の縮図を思う。
「職場の華」という言葉が表す「若くてかわいい」という女性の商品価値は、世の中に確かに存在するので、否定はしない。もっともわかりやすい例がいわゆるアイドルだろう。古くはおニャン子クラブからモーニング娘。、AKB48などの女性アイドルグループは、メンバーが「卒業」と称して入れ替わることが前提となっている。常に「若くてかわいい」を維持することで商品価値を保つ。男性であるSMAPやTOKIOが平均40歳を超えてもアイドルグループとして成り立っていることと対照的である。これが世間の価値観であることは否めない。
しかしそれはあくまでも、エンターテイメント的マーケットでの商品価値であって、オフィスワークらしき職場の中での絶対的価値ではない。「職場の華」を是とする女性も確かにいるだろう。若いという条件が付くので、中長期的にはあまりよい選択とも思えないが、そこは人それぞれだ。だが、それは働く女性の誰もが目指す姿では決してない。日々、セクハラと戦い、あるいは適当にかわし、能力や技術で仕事上の機能発揮や成長を目標として働く女性であれば、まるで「職場の華」が目指すべき道であるかのように押しつけられたら、そりゃあ腹も立つだろう。
【そしてルミネの動画は働く女性の敵になった】
変わりたい女性を応援したかったというこの動画のそもそもの設定は間違っていなかったと思っている。疲れている顔や構わない髪型や服装を反省し、「変わりたい」と思う働く女性は実際にたくさんいる。ただしそれは、男性社員のくだらない「需要」に応えるためではない。自分の見た目をきれいにしようと努力するのは、楽しくて充実した自分の人生のためである。女性たちがおしゃれやメイクを、男性や周囲のためにしていると思うところに大きな勘違いがある。
企画して予算化して発注して制作して公開して、、、ここに至るまでに携わったであろう数多の人々はなぜ、このことに気が付かなかったのだろう。誰一人として気付かないまま、意思決定してしまったのだろう。「日常を切り取った」とする製作側の発言に、さもありなんと思う。業界や企業には、自分たちの常識、ローカルルールが実に多い。自分たちの常識が社会で通用するか、客観的に見直した方がいい。
かつて筆者が会社に入社した頃は、「女性社員は若くてかわいければいい」と明言する男性社員はいくらでもいた。25年たって、彼らは今もその考えを変えてはいないが、あまり公言すべきでないことくらいは学習している。なのに、一企業が広報として言い放つとは。働く女性を応援したいというのなら、社会を変えたいのに、変えられないでイライラしている働く女性をもっとちゃんと応援してほしいものである。
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