男性社員のそんな「需要」に応えるために、おしゃれするわけじゃない。ルミネの炎上した動画に、わかりあえない社会の縮図を思う。
【削除されたルミネの動画】
2015年3月20日頃に、JR東日本のグループ会社ルミネが「働く女性たちを応援するスペシャルムービー」を公開し、途端にネットで非難が殺到して二日後にはお詫び文を掲載して動画を非公開にするという、あっという間の出来事があった。関東ローカルなショッピングセンターのネット上での小火だから、ご存じない方も多いかもしれない。「ルミネ 動画 炎上」等で検索していただければ、おそらく非公開になる前に保存された動画や画像が見られるが、一応、概要を文字でおこしてみる。
会社前の出勤風景。あまりおしゃれでない設定の女性社員Aに話しかける、先輩らしき男性社員。
男性「おはよう。顔、疲れてるなあ。残業?」
女性A「いや、普通に寝ましたけど」
男性「寝て、それ?あははは」
すれ違うおしゃれな設定の女性社員Bに話しかける同じ男性社員。
男性「髪切った?」
女性B「巻いただけです」
男性「やっぱりかわいいよな、あのコ」
女性A「そうですね。いい子だし」
男性「大丈夫だよ。吉野とは需要が違うんだから」
女性A「需要?」(ここで、需要の定義らしき文字画面が入る。)
【需要】じゅ・よう 求められること。この場合、「単なる仕事仲間」であり、
「職場の華」ではないという揶揄。
女性A「最近さぼってた?」と自問。その上に「変わりたい?変わらなきゃ」の文字。
個人的にはもはや腹も立たないし、馬鹿だなあと思うだけが、これを見て反射的に怒った女性や、「また、そこからなの?そこから説明しなきゃだめなの?」という無力感におそわれた働く女性が大勢いたことは想像に難くない。
【ルミネの動画は働く女性イライラを増幅した】
この動画の何がいけないのか、わからない人が実はたくさんいるらしいので、念のために説明しておこう。「髪切った?」と聞くことさえもセクハラ認定されるご時世。冒頭の「顔、疲れてるなあ」からほぼ言ってはいけないことオンパレードで、このままセクハラ研修の教材に使えそうな会話だが、実はまだそこは、それほど大した問題ではない。
「職場の華=需要」であると言い切ったこと。それを、主人公が受け入れ「職場の華」になることを肯定したこと。問題の本質はこの2点である。特に後者の罪が重い。男性の需要に応えることが正、という教育をされがちな女性に、やっぱりそうなのかと思わせる演出は、あまりにも罪深い。
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