NHKスペシャル『NEXT WORLD』の描く2045年が、サラリーマンと専業主婦、子供二人というステレオタイプ家庭だったことに驚く。もっと多様性を考えよう。
しかし『第2回 寿命はどこまで延びるのか』では、ナノマシンでがん治療をして、それでもだめなら再生医療で臓器を取り換える。若返りの薬ができて、70歳でも80歳でも子供が産めるようになる。そんな世界を描いている。平均寿命が100歳を超える時代に、人はいったいどう生きるのかと問いかける。もしも、それがこの番組のメッセージなのだとしたら、こんな固定観念満載の近未来ドラマをなぜ作ったのだろう。
100歳まで若く健康で生きられ、ホワイトカラーの仕事の大半をAIが担うとしたら、会社に何十年も通勤するだろうか。出世するかどうかで汲々としたりするだろうか。生涯一人の相手と家庭を築いたり、成長した子供のために専業主婦を続けたりするだろうか。まったく別の生き方を考えるのではないだろうか。
テクニカル・シンギュラリティを越え、人間より賢いAIができても、社会生活が今の延長でしかないのなら、なんのためのAIだろう。これではAIは、社会を変えるイノベーションではなく、ただのインベンションになってしまう。人知を越えるのだから、可能性は無限にあるはずだ。AIもナノマシンも再生医療も、基本的に人間が幸せになるために研究されている。その幸せの形は、もっと様々な形であっていいと思う。
大多数の視聴者には、これくらいのステレオタイプの方が受け入れやすいだろうと考えたのであろうNHKの制作スタッフの皆様にはぜひ、もっとまじめに多様性を考えて欲しいものである。
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