日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」は一昨年の「愛」、昨年の「命」に続き、「偽」と決まった。政治も経済もスポーツも、何から何まで偽装に覆われたこの国を的確に象徴した一文字ではあるが、暗澹たる思いは否めない。 その中でも人々の生活に最も身近な存在である「食」の偽装について、原因の一端と今後のあるべき姿を考えてみたい。
ブランド論で有名なデビット・A・アーカーが以下のように述べている。
「コア・アイデンティティは、ブランドの永遠の本質を表す。それは、タマネギの何層もの皮や、チョウセンアザミの葉をむいて後に残っている中心部分である。」
「コア・アイデンティティ」とは企業で考えれば、その存在理由ともなる「本質的価値」である。各企業とも、この社会において存在している以上、何んらかの使命と本質的な価値を有しているはずだ。そして、食に関わる企業はその本質に、生活者に安全と安心を提供することが含まれているべきであることは間違いない。
しかし、各企業ともブランドという看板を背負っているにも関わらず、アーカーが言うタマネギの中心に、安全と安心が存在していることを忘れてしまっている。
恐らく、年明けには企業トップが年頭の訓示を述べるのだろう。その中で、是非とも自社の本質は何なのかを今一度、語って欲しいと思う。
冒頭に紹介した通り、日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」は第一位が「偽」であり、揮毫した高僧が「悲憤に耐えない」とコメントしていた姿が印象的だった。
しかし、第二位以降を見るとさらにその思いが高まる。
「食」「擬」「嘘」「謝」・・・。
ギリシャ神話のパンドラの箱。女が好奇心に負け禁じられた箱を開けてしまうと、中から様々な災厄が飛び出したという。まさに今日の偽装大国たる日本の姿のようである。
神話には続きがある。パンドラが慌てて箱を閉じると、最後には「希望」だけが残ったという。
神話には様々な解釈があり、最後に残った希望故に、人類は儚い望みを持ちより苦しむこととなったという説もある。しかし、今日の状況を考えると、希望は希望としてポジティブにとらえたい。そして、その希望が世の中を照らすように、企業は本来の使命に目覚め、生活者も賢い知恵を発揮するようになりたい。
来年の漢字が是非とも明るい文字になるように。
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2008.01.01
2008.02.11
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。