会社は頭から腐る・・・「性弱説」の視点

2007.12.13

経営・マネジメント

会社は頭から腐る・・・「性弱説」の視点

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

広報専門誌「PRIR」(プリール)が実施した 「企業の不祥事と対応に関する調査」(07年11月実施) によれば、 「あなたが企業の不祥事・その対応を見て、  信頼できないと感じるのはどのようなときですか?」

という設問(複数回答)に対する回答は、

・不祥事の実態を把握した後、隠そうとしたとき(24%)
・一度発表したことが、後から嘘だったと分かったとき(23%)
・嘘の情報を発表したとき(21%)

が上位に来ています。

・人命や健康に関わる不祥事を起こしたとき(17%)

は4番目です。

PRIRでは、この調査結果に基づく記事に、

消費者は、「事件」ではなく、企業の「対応」を見ている

という見出しをつけています。

つまり、消費者は、

「事件」

そのもの以上に、不祥事を起こした企業が

「どのように対応するか」

を重視していることが、この調査から検証できたというわけです。

企業の対応によって、
その会社の「誠実さ」を測るのが消費者。

なぜなら、「誠実さ」が、

「相手を信頼するかどうか」

の判断基準だからです。

では、「誠実でない」というのはどういうことでしょう?
子供でもわかる簡単なことですよね。

・嘘をつくこと
・隠すこと
・だますこと
・裏切ること

などです。

事件を起こしたことだけでも、

「企業に対する信頼」

はある程度失われますが、さらに不祥事発覚後の

隠蔽工作、現場への責任の転嫁、見苦しい言い逃れ

などによって、企業の信頼性はさらに大きなダメージを受けます。

「実害はなかった」「健康上の問題は発生しなかった」

といったことが争点ではないことは明白なはずなのに。

なぜ、不祥事企業の多くが、
適切な対応ができずに自ら泥沼にはまりこんでいくのか?

不思議ですよね。

しかし、結局のところ、これは「企業」という

「法人格」

の問題ではないのです。

会社トップ個人の「人格」の問題なのです。

産業再生機構の元専務取締役COO、冨山和彦氏が、
最新著作の『会社は頭から腐る』で次のようなことを
書いています。

“・・・さらには産業再生機構での再生の修羅場で見た人間模様。
 これらを通じて見えてくるのは、ほとんどの人間は土壇場では、
 各人の動機づけの構造と性格に正直にしか行動できないという
 現実であった。”

表現がちょっと難しいですが、ひらたく言えば、
土壇場では、その人が本来持っている

本性(特性・特徴)

がそのまま露呈してしまうということです。

“そこには善も悪もなく、言い換えればインセンティブと
 性格の奴隷となる「弱さ」にこそ人間性の本質がある”

と冨山氏は述べていますが、会社のリーダーでさえ、
追い詰められると、会社の代表としてではなく、
一人の人間としての判断、行動しか取れなくなるということ
でしょう。

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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